English words
英語ひとくちメモ/おもしろ表現
English Words 英語ひとくちメモ
2014年03月05日

Alligator cracking(アリゲーターがポコポコ)

今日の話題は、冬のお天気です。

先日、シリコンバレーのサンノゼ空港から成田行きの飛行機に乗りましたが、ANAのキャビンアテンダントの方が、こんなことをおっしゃるのです。

今日は、サンノゼで雨が降っているので、びっくりしましたと。

シリコンバレーから日本への直行便というのは、かの有名なボーイング787型機「ドリームライナー」。

昨年1月11日、地元サンノゼ市の熱い期待を背負って華々しく就航しましたが、バッテリーの諸問題で、すぐに陸上待機。代替え機もないまま、路線は一時中断となりました。(写真は、就航直後の地元紙の全面広告)

日本からの初就航便(NH1076)の翌日、サンノゼ発の便(NH1075)にいそいそと乗り込んだわたしも、成田からの戻りは、いつものサンフランシスコ便(NH008)となってしまいました。

それからサンノゼ便が再開されたのは、数ヶ月たった6月のこと。

そんなわけで、サンノゼ市を始めとするシリコンバレーの雨期を、ANAのアテンダントの方々は、経験できなかったようです。

そう、シリコンバレーの雨期(rainy season)は、だいたい10月末から5月初頭くらいですから、サービス再開の6月には、もう真夏のような日照りでした。

そして、今年は、カリフォルニア全体が干ばつ(drought)状態。ですから、アテンダントの方は、それまでサンノゼに雨が降る様子を見たことがなかったのでしょう。


というわけで、今シーズンは極端に雨が少ないカリフォルニア州ですが、逆に東海岸や中西部は、ものすごい雪の量だそうです。

英語で言うと、こんな感じでしょうか。

The eastern part of the United States is being hit by one snowstorm after the other well into March
 アメリカの東側は、3月に入っても吹雪の連続に見舞われている

雨が少ないのも水不足(water shortage, water scarcity)で困りますが、雪が多いのも生活がマヒして困りものですよね。

お向かいさんは、出張先のシカゴで足止めになったそうですし、友人は、ボストンで借りているアパートの温水器(water heater)が壊れたと嘆いていました。(Photo taken in Massachusetts by Michael S. Gordon/Springfield Republican/AP)

なんでも、あまりの寒さ(unusually frigid temperature)に温水器の温度センサーが壊れて、水を温めるガスヒーターがずっと炊かれていたそうで、熱湯のせいでタンクが壊れて、辺りが水浸しになったとか。

「修理に何百ドル(数万円)もかかって、大家さんにも文句を言われた」と、半ばあきらめムードで話してくれました。


そして、雪が多いと、車社会のアメリカには、いろんな現象が起きるのです。

たとえば、先月2月は、雪のせいで車の売れ行きが伸びませんでしたが、スバルだけは、例外。

月間販売台数は、昨年に比べて25パーセントも増えたそうで、「やっぱり雪道はスバル!」というドライバーが、アメリカには多いようです。

一方、イヤな現象の代表例は、舗装道路の穴ぼこ。

英語で、pothole(ポットホール)と言いますが、アスファルトの舗装が陥没して、あちらこちらに大小さまざまな穴が出現するのです。

こちらの写真は、ペンシルヴェニア州ポッツヴィルにできた大きな pothole
 道行くドライバーに注意を促すために、誰かが「Hole」と書いた自家製看板を立てたようです。
(Photo by David McKeown/Associated Press)

もちろん、一回の雪で、いきなり穴になるわけではありません。

最初はアスファルトの表面にできる小さなひび割れ(cracks)から始まって、何年か放っておくと、ひびが深くなって水が浸食するようになり、冬の間、凍りついて氷となります。

春になると氷は溶けて水となりますが、この凍結と氷解のプロセスを繰り返しているうちに、ぽっかりと穴になるのです。なぜなら、水は氷になると体積が増える。この膨張の力が、アスファルトの亀裂をどんどん押し広げ、地盤もゆるいし、ついには穴にしてしまうのです。

それで、この自然現象を、こんな風に説明した方がいらっしゃいました。

If you’ve got a pavement in poor condition, that’s got a lot of alligator cracking…
 もしも道路の舗装を悪い状態に放っておけば、それはアリゲーターがポコポコといっぱい生まれているようなもんだよ

Where water is getting into the pavement and freezing and thawing, it’s going to break up the structure
 水が舗装に浸食して、凍結や氷解を繰り返したら、それは構造(舗装された道路)を破壊することになるんだ

(Excerpted from the AP article, “Potholes are symptom of a looming, larger problem” by Allen G. Breed; quoted statement by Kevin Haas, a traffic investigations engineer, the Oregon Department of Transportation in Salem, Oregon)

なるほど、気性の荒いアリゲーターを使って、わかりやすく説明していただいていますが、上の文章の a lot of alligator cracking という部分は、いろんな風に取れる表現かもしれません。

Crack という言葉は、「ひび割れ」という名詞でもあり、「ビシッと音をたてて割れる」という自動詞や「(何かを)打ち砕く」という他動詞でもあります。
 ですから、a lot of alligator cracking というのは、ハ虫類のアリゲーターの卵がビシッと割れる、つまり「ポコポコとたくさん生まれている(この場合は自動詞)」にも理解できるし、アリゲーター自体が「舗装をボコボコ壊している(この場合は他動詞)」という風にも理解できます。

アリゲーターが表しているのは、「ひび割れ」であり「道路を壊す自然の力」ですが、なんとなく、アリゲーターの赤ちゃんがポコポコといっぱい生まれていると取る方が、かわいらしいでしょうか?

それから、alligator という名詞は、数えられる名詞(countable noun)ですので、a lot of alligators と複数形になってもおかしくはないですが、アリゲーターはあくまでも比喩(metaphor)として使われているので、複数形にはしていないのでしょう。


というわけで、冬期の頭痛の種、道路の穴 potholes

春先になると、「あ~、あの穴をなんとかしなくっちゃ」と自治体はお金の工面に頭をかかえることになりますが、あまりに雪が多いと、修理したくても「もう予算がない!」と悲鳴が聞こえてきそうですよね。

そして、pothole より深刻なのが、sinkhole(シンクホール)。

ボコッと土壌が陥没してできる大きな穴ですが、ケンタッキーでは、コルヴェット博物館の床が抜けて、展示中のコルヴェット8台が穴の中へ!
(Photo from CBS News)

「救助」されたブルーのコルヴェット『ブルーデヴィル』ちゃんは、奇跡的にエンジンスタートできたそうですが、もう一台の赤い『ルビーレッド』ちゃんは、あちこちに「ケガ」をして、修理が必要。そして、残り6台を全部引き上げるには、4月までかかるとか・・・。

こんなに大きな sinkhole だったら、もはや「アリゲーター」じゃ済まないですよね。

Oh, you’ve got Godzilla cracking!
なんと、ゴジラが生まれてる!

と、そんな感じでしょうか。


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