Don’t take it personally(落胆しないで)
<英語ひとくちメモ その137>
夏の初め、忙しくしている親友から何ヶ月かぶりにメールがあって、「わたしの部門がなくなってしまうのよ」と、シリアスな様子。
勤めていた会社が、彼女の所属する開発部門の優秀な人材も含めて、すべて「店じまい」することにしたようです。
「わたしは今まで真夜中まで時間を割いて懸命に頑張ってきたのに、そんな努力が無になるなんて、ただただ悲しいわ」と、落胆の様子が見て取れる内容でした。
こういった場合、正式に会社の方針が発表されない限り、はっきりとしたことはわかりません。ですから、最初のうちは「噂は噂だから、どうなるかわからないでしょ(Rumors are just that, rumors)」と励ましていました。
が、そのうちに噂が現実味を帯びてきて、ヨーロッパの保守部門にノウハウを伝えたら、すべて任務が完了するとのこと。
そこで、わたしは、返事のメールにこのような言葉を添えてみました。
Don’t take it personally
自分を責めて落胆なんかしないでね
ここで it というのは、「会社の決断で仕事が続けられなくなった」ということですが、それを自分自身のせいだとは思わないように、ということです。
そう、take it personally というのは慣用句にもなっていて、誰かが言ったこととか、なにかしら良からぬ出来事を真剣に受け止めて、心を乱す、といった意味があります。
ですから、Don’t (Do not) take it personally というと、「自分を責めて、心を乱したりしないように(あなたのせいじゃないんだから)」といったニュアンスになります。
彼女は、有名校を出たらすぐにソフトウェアエンジニアになり、一貫してネットワーク製品の開発に携わってきた優秀なエンジニア。買収や合併を繰り返して今の会社に勤務するまでは、何度も社長賞をいただいたことがあります。
ですから、部門が消滅してしまっても、自分に非があるなんて思うことはないのよ、と付け加えておきたかったのでした。
末尾には、こうも付け加えておきました。
Take it easy for now
今はゆっくりしてね
そう、Take it easy は、「あまり根を詰めないで、のんびりやってね」という意味のポピュラーな表現です。
日常会話では「さようなら」の代わりに使われるような慣用句ですが、わたしは心の底から「のんびりしてちょうだいね」という意味を込めました。
その Take it easy に for now と付けたのは、「今は、のんびりしてね」というニュアンスを込めたかったから。また心の準備ができたら、「いつでも出動してちょうだい」という意味も含んでいます。
彼女は、おとなしく見えて、タフな一面も持ち合わせるレディー。
ですから、この夏、会社から解放されると、さっさと自宅のバスルームの改修に取り組み、工事屋さんを雇って自分でデザインした構想を展開中。
鮮やかなタイルのレイアウトとか、棚や壁の色選びとか、わたしも何回かデザインの相談にのっています。すると、自分のことのように、こちらも楽しいのです。
今は、シリコンバレーのエンジニアは「売り手市場」。探してみれば、必ず良い仕事が見つかるはずなのに、それよりも彼女は、年末まで中休みを取ることにしたのでした。
というわけで、いろいろと難しいシチュエーションに出会うと、言葉を選ぶにも慎重にならざるをえませんよね。
大事なことは、相手のお話をしっかり聞くことと、お仕着せの表現ではなく、自分の心の底から湧いてくる言葉を選ぶことかもしれません。心からの言葉は、相手には必ず通じるはずですから。
ところで、英語を話す上で相手に気を使うケースには、こういったシチュエーションもありますね。
それは、誰かが連れている犬や猫の性別がわからないとき!
そう、だいたいのヨーロッパの言語は、「男女(male、female)」の区別をつけますよね。これは、犬や猫のペットにも当てはまるのが原則です。
たとえ相手が動物であっても、He or She(彼または彼女)を間違えると、ちょっと失礼になるのです。
ですから、ちょっと見に「オス・メス」がわからないときには、わたし自身は主語を抜くことにしています。
先日も、エレベーターに小さなワンちゃん(こちらの写真のような白いワンちゃん)を抱っこした男性が乗り込んできたので、こう言葉をかけてみました。
Wow, such a cutie!
まあ、なんてカワイこちゃん!
すると、男性はこう教えてくれました。「この子は16歳の誕生日を迎えたばかりで、今もずっと二人でお祝いの続きをやってるんだよ(We just celebrated her 16th birthday, and we’ve been celebrating since then)」と。
なるほど、こちらも勢いで「カワイこちゃん」と言ってしまったものの、「her 16th birthday」とおっしゃっているので、ちゃんと女のコだったんですね。
そこで、エレベーターを降りる彼には、Happy birthday! と声をかけたのでした。
ワンちゃんによっては、こんな風に主語を抜いてみることもあります。
Looks so clever!
とても賢そうですね!
まさか文頭の主語を it(それ)にすることはできませんので、そういったときには、いっさい主語を抜くことも逃げ道かと思います。
そう、動物と一緒に暮らす方にとっては、彼らは立派な家族の一員。ファミリーなのに「それ」呼ばわりはできませんよね。
というわけで、またまたお話がそれていますが、今日の慣用句は、take it personally 。
Do not (Don’t) take it personally とすると、「自分のせいにして心を乱さないように」といったアドバイスになるのでした。
蛇足ですが「ワンちゃん」の小話です:
昨年(2018年)の戌年、「ワンちゃんの年」と題してエッセイを書いたことがありました。
隣に停まった車の運転席には、賢そうなワンちゃんが座っていて、今にもドライブできそうだったというお話です。が、なんと、それが現実に起きたんです!
昨日ローカルニュースで報じられたところによると、海沿いのアプトス(Aptos)という街で、メルセデスベンツに乗ったワンちゃんが車を転がして壁に激突させてしまったとか。
ワンちゃんの家族が撮影したこちらの写真では、まるで「デュークくん」が運転しているようにも見えますが、実は、彼の首輪に付けられたリーシュ(リード紐)が車のギアに引っかかって、ギアが「ニュートラル」に入り、坂道を下って行ったというのが真相のよう。路上のゴミ箱を蹴散らし、最終的には壁にぶつかって停車し、事なきを得たとか。当のデュークくんも、「やっちゃったよ〜」という困惑の表情でしょうか。
まあ、昨年わたしが見たワンちゃんとは「別人」だとは思いますが、犬って人間みたいな一面がありますよね。