Happy Christmas(ハッピークリスマス?)
<英語ひとくちメモ その158>
いつの間にか、今年も師走。
あれよ、あれよという間に、年末の準備にとりかかるタイミングとなりました。
年末の行事といえば、お寺や神社のすす払いやお家の大掃除などを思い浮かべますが、クリスマスカードや年賀状を書くこともありますね。
アメリカでは、12月に入ると、クリスマスカードが次々と郵便受けに届きます。
毎年、カリフォルニア州サンノゼ市の我が家に届く最初のクリスマスカードは、斜め前にお住まいのご近所さんからでした。
12月に入ると、真っ先に最初の週に届くのです。
いえ、すぐそばにお住まいの彼女には、ご近所さんのランチなどで定期的にお会いしていました。が、お付き合いが深いほど、クリスマスカードを送って、年末年始のご挨拶をしたくなるものです。
筆まめの彼女は、毎年欠かさずにカードを送ってきてくれるので、わたしも今年最初に書いたクリスマスと新年のご挨拶は、彼女宛てでした。
ちょうど一年前、出張先のミズーリ州で夫が急逝した彼女ですが、アメリカには「喪中」という概念はありませんので、どうぞ穏やかな一年を送ってくださいと、願いを込めて国際便のカードを送ったのでした。
クリスマスカードに書くメッセージというと、以前はこんなものがポピュラーでしたね。
Merry Christmas and a Happy New Year!
文字通り、「メリークリスマス そして幸せな新年を!」というもの。
けれども、近頃はこういったものの方がポピュラーになっています。
Season’s Greetings and best wishes for a happy, healthy and peaceful New Year
Wishing you Happy Holidays and a wonderful New Year
The best wishes to you and yours for a wonderful Holiday season
ここでキーとなってくるのは、「メリークリスマス」といった宗教的な言葉が影を潜めたこと。
クリスマスは、あくまでもキリスト教のお祝いですので、イスラム教やヒンドゥー教、そして宗教とは関係なくクワンザ(Kwanzaa)を祝うアフリカ系の方々などには不向きです。
そこで、「メリークリスマス」の代わりに Season’s Greetings とか Happy Holidays、a wonderful Holiday season といった中立性を保つ言葉が出てきました。
言うまでもなく、「シーズンのご挨拶」とか「ハッピーな祝日」というのは、年末年始のお祝いの時期をさしています。
3つ目の The best wishes to you and yours ですが、yours というのは面白い表現ですね。
こちらは、直訳すると「あなたのもの」ですが、家族や友人、恋人と「あなたの身近にいる大切な人」のことをさしています。
どちらかというと、一緒に暮らしている恋人や配偶者のニュアンスが強いですが、誰でも当てはまるような、漠然とした便利な表現です。
たとえば、相手が男性で、配偶者が男性でも、いちいち奥様やダンナ様といった性別のはっきりした言葉を使わないでいいわけです。
You and yours を You and your loved ones としてもいいですね。
こちらの your loved ones を直訳すると「あなたに愛される方々」ですが、「あなたが愛する方々」という意味です。
この your loved ones の場合も、男性でも女性でも使えるし、しかも複数形なので家族や親類にも使える便利な言葉です。
と、ここで、上でご紹介した3つの文章に戻りましょう。
全体的には、こんな形が見えてきます。
Season’s Greetings and best wishes for (a happy and healthy New Year)
The best wishes to you for (a New Year)
Wishing you (Happy Holidays)
これだけおさえておけば、あとは自分が好きな言葉をはめ込めばいいのです。
The best wishes to you and your family for a Happy Holiday season
Wishing you peace and joy throughout a New Year
という風に、ごくシンプルな表現にすると失敗はありません。
とくに新年(New Year)に向けては、こんな言い方もありますね。
May the New Year be filled with joy and happiness
「新しい年が、喜びと幸せに満ちあふれますように」と祈念する言葉です。
May your New Year be blessed with good health and success
「新しい年が、健康と成功に恵まれますように」という言い方もあります。
いずれにしても、こんな形をとります。
May the (your) New Year be filled (blessed) with 〜
「〜に満ちあふれる、恵まれる新年」の「〜」の部分に、好きな言葉を入れればいいのです。
Wishing you a happy New Year! May it be filled with good health and fortunes
という風に、二つの文章に分けて、New Year の部分を it で受けて言葉を続けてもいいですね。
というわけで、ここで表題になっている「ハッピークリスマス(Happy Christmas)」の登場です。
いえ、わたし自身の32年間のアメリカ生活をふり返ると、ハッピークリスマスという言葉をほとんど聞いたことがないのです。
「メリークリスマス」はすたれたとはいえ、やはりアメリカでは好んで Merry Christmas を使う方も多いです。
ところが、日本に戻って来ると、お店ではよく「ハッピークリスマス」というポスターを見かけます。それで、これは和製英語なのだろうか? と疑問に思っておりました。
が、先日テレビでは、こんなクリスマスカードのメッセージが紹介されていました。
Wishing you a Happy Christmas and a New Year
こちらは、エリザベス2世の跡を継ぎ即位されたチャールズ3世が出されたクリスマスカード。イギリス国王として初めてのクリスマスカードになります。
スコットランドのイベントで撮られたチャールズ国王とカミラ王妃の写真が添えられた、ごくシンプルなクリスマスカードでした。
そこで、なるほど Happy Christmas とは、イギリスでは一般的な表現なのだな、と納得したのでした。
そう、Happy Christmas と Merry Christmas の違いは、イギリスとアメリカの違いなのでしょうね。
わたし自身は、カリフォルニア州に30年、フロリダ州に2年と、伝統的な文化を持つアメリカ北東部には住んだことがないので、「古き良きアメリカ」で Happy Christmas と使われていたのかどうかはわかりません。
けれども、少なくとも現代のアメリカでは、Merry Christmas もしくは Happy Holidays が広く使われていることは確かです。
そう、クリスマスカードに書く時もそうですが、口頭でも、圧倒的に Merry Christmas や Happy Holidays が使われます。
ですから、アメリカでこの時期に挨拶をする時には、ハッピークリスマスではなく、ハッピーホリデイズかメリークリスマスを使うことをお勧めいたします。
というわけで、何かと気ぜわしい師走。
もしも英語で時候の挨拶をする時には、イギリスとアメリカの英語の違いを頭のすみに置いておいていただきたいものですね。