Ice cream vs. ice(アイスクリームとアイス)
ふと、こんな言葉が頭に浮かびました。
トリコロール
フランスの国旗みたいに、赤、白、青といった3色のコンビーネーションをさしますよね。
でも、英語だと3色の取り合わせは tricolor(トライカラー)と発音するはずなのに、
どうして日本語では「トリコロール」と言うんだろう? と不思議に思ったんです。
どうやら、トリコロールというのは、フランス語の由来のようですが、日本語の外来語には、たくさんの言語が混じっていて、かなり厄介ですよね。
それで、外来語には英語由来のものも多いわけですが、中には短く省略されていて、もともとの言語では通じなさそうなものもたくさんあります。
もちろん、チョコレートの略ですが、英語ではちゃんと chocolate と言わないと通じないですよね。
そして、発音も「チョコレート」ではなく、「チョコレット」といった感じでしょうか(最初の「チョ」にアクセントがつきます)。
それから、パイン。
こちらは、ハワイ名産の果物パイナップルですが、面倒くさがらずに pineapple と言わないといけませんね。(Photo from Wikimedia Commons)
だって、「パイン」と言ったら、 pine を思い浮かべて、べつなものになってしまいますから。
そう、pine は「松の木」ですから、美味しいパイナップルとは、ちょっと違います。
松の木からボコッと落ちてくる「松かさ」は、pinecone(パインコーン:松の球体の実)と言いますね。
わたしが通っていた大学には、大きな松の木がたくさん生えていて、並木道を通る時には怖いほどでした。なぜって、松かさも巨大なので、頭に落ちてくると大ケガをしそうだったから。
それで、食べるパイナップルといえば、ちょっと前に世界中で大流行した「Pen Pineapple Apple Pen(PPAP)」という歌を思い出しますよね。
この歌にあったように、発音は「パイナップル」ではなく、「パイナッポー」という風になります(お上手な発音でした!)。
それから、こちらの外来語も、省略するとわかりにくいでしょうか。
こちらも、現地ではきちんと ice cream と言わないと通じませんよね。
だって「アイス」と聞くと、「氷」の ice を思い浮かべて、べつなものになってしまいます。
アイスクリームが欲しいのに「アイス」と頼んでしまったら、氷をかじることになっちゃいますよね。
それで、堅苦しいお話ではありますが、アメリカで ICE(アイス)と言うと、まったく違った意味にもなるんです。
こちらは、正式には U.S. Immigration and Customs Enforcement という名前。
アメリカの国土安全保障省の一部門で、不法に移民が入って来ていないかと取り締まる、警察のような組織です。
最後の Enforcement という言葉は、「法律を守らせるために取り締まる」といった意味合いがあります。
以前は、移民局の中に取り締まり班がいたんですが、2001年の同時多発テロ以降、国境警備がどんどん厳しくなってきて、新たに国土安全保障省をつくって、その中に移民の事務手続きをする部門(Citizenship and Immigration Services)と取り締まる部門(ICE)を設置したのでした。
ですから、サンフランシスコやサンノゼといった移民の多い街で「アイス」と聞くと、氷のアイスよりも、こちらの取り締まり部隊を思い浮かべてしまうのでした。
と、アイスクリームに話を戻しますと、
アイスクリームの ice cream をもじって、
I scream(わたしは叫ぶ)という表現を聞いたことはありませんか?
I scream, you scream, we all scream for ice cream
という文章なんですが、「わたしも、あなたも、わたしたちみんなが、アイスクリームって叫ぶのよ」というわけです。
夏になると、必ず誰かが言い出す「ことわざ」みたいなものなんですが、調べてみると、こちらは1925年に流行った歌だそうです。
「雪と氷のエスキモーの地には、大学があって、スポーツ応援団がみんなでアイスクリームって叫ぶのさ」
と、なんとも楽しげな歌の歌詞であり、題名なんです。
きっとこの頃、アイスクリームが手軽に一般家庭に出回るようになったということもあるのでしょうが、ちょうどこの時期は、アメリカの禁酒時代(Prohibition:1920年から1933年まで)。
アルコールが禁止されて飲めないので、代わりに炭酸飲料にアイスクリームを浮かべたアイスクリームソーダ(ice cream soda)が人気となり、アイスクリームの地位もグンと向上したのでした。
アイスクリームをトラックで売り歩くアイスクリームトラック(ice cream truck)も登場しますが、チリンチリンと音楽を鳴らして走り回るトラックは、子供たちの人気の的となりました。
さらに、どんどん進化を遂げるアイスクリームは、果物やシロップと一緒に器に盛ったアイスクリームサンデー(ice cream sundae)としても大流行します。
バナナを縦に割って、その上にアイスクリームやホイップクリームをどっさりとのせるバナナスプリット(banana split)などは、アメリカのデザートの象徴と言えるかもしれません。(Photo from Wikimedia Commons)
そうそう、アイスクリームといえば、こちらの格言を忘れてはいけませんね。
スヌーピーの漫画で有名な「ピーナッツ・コミック」に出てくる、主人公チャーリー・ブラウンくんのお言葉。
お友達のルーシーに「人生について、何か格言(words of wisdom)はある?」と聞かれ、こう答えたチャーリーくん。
Life is like an ice cream cone
人生って、ソフトクリームみたいなもんだよね
You have to lick it one day at a time
一日ずつ、ちびちびとなめないといけないんだ
何をするにも、少しずつ進まないと、いきなり大前進なんてできないよ
と、なんともチャーリーくんらしい格言でしょうか。
追記: まったくの蛇足ではありますが、人生については、こういう格言もありますね。
Life is like a box of chocolates
人生って、チョコレートの詰まった箱みたいなもんだよ
You never know what you’re gonna get
何が出てくるか、まったくわかんないんだから
1994年の人気映画『Forrest Gump(フォレスト・ガンプ)』に出てくる、主人公の南部なまりのセリフですが、フォレストのお母ちゃんがいつも言って聞かせたという、重みのある言葉です。
もともとは、村上春樹氏の長編小説『ノルウェイの森』に出てくるセリフをもじったという説があるそうです。