Kick the can(空き缶を蹴る)
<英語のひとくちメモ その167>
今日の話題は、ずばり、こちらの表現です。
Kick the can down the road
直訳すると、「空き缶(the can)を道の向こうへ(down the road)蹴る(kick)」。
そう、頭の中にすぐにイメージが浮かんでくるような、わかりやすい表現です。
経験したことがある方にはおわかりでしょうが、空き缶をポ〜ンと蹴ると、かなり遠くまで飛んでいきますよね。
「缶蹴り」という遊びもありました。
遊びの缶蹴りは、kick the can という名詞になります。
We used to play kick the can when we were school-age children
子ども(小学生)の頃には、缶蹴りをして遊んだものだよ
そこに空き缶があれば、おとなも子どもも蹴ってみたくなるものです。
そして、この「空き缶を蹴る」行為を慣用句にしたものが、
kick the can down the road
この場合の kick は、「(缶を)蹴る」という動詞です。
こちらの表現は、比喩的に使われていますね。
それで、この場合「空き缶」とは何でしょう?
それは、目の前に山積する、頭を抱えてしまうような大問題。
その大問題(the can)を「向こうの方に足で蹴る」ということは、「先延ばしする」とか「一時的な解決策で逃げておいて、根本的な解決を避ける」という意味。
たとえば、国のお金といった、大きなお話。
今月、日本政府が打ち出した経済対策の補正予算案。13兆円ほどの補正予算案のうち、およそ7割を国債でまかなう、という驚きの予算案です。
国債は、平たくいうと「国の借金」。定期的に利子も付きますし、最終的には借金は決められた期限に返済しなければなりません。
この積もり積もった借金を誰が払うのか? というと、現時点で国策を議論している方々ではなく、未来の世代。問題を先延ばして困るのは、子や孫の世代です。
そんなわけで、この補正予算案を耳にしたとき、真っ先に思い出したのが、この言葉。
Kick the can down the road
そう、英語ではこんな感じでしょうか。
The Japanese government is kicking the can down the road on the national debt, proposing a supplemental budget mostly financed through newly issued government bonds
日本政府は、その大部分を新たに発行する国債でまかなう補正予算案を提出して、国の借金に関する大問題を先延ばしにしている
というわけで、今日は、ごく短いお話でした。
Kick the can down the road
政治をつかさどる方々は、どうしても「今」しか考えないのでしょうね。