Like father, like son(この父にして息子あり)
今日のお題は、Like father, like son
昔からの有名なことわざで、「この父にして息子あり」という意味です。
つまり、息子というものは、父親によく似るものだ、という格言。
文法的には、「~に似る」という意味の前置詞 like を使って
「父のようで(like father)、息子のようで(like son)」という漠然とした言い方になっていますが、
一般的に使われる表現なので、そのまま覚えていると便利だと思います。
「~にそっくりな、うりふたつ」という意味では、spitting image という言葉もあります。
He is the spitting image of his father at the same age
彼は、同年齢だったときのお父さんとうりふたつです
こちらは、どちらかというと姿かたちが似ていることを表しますが、
Like father, like son の方は、
外観よりも、好ましくない習性も含めて、クセや習慣が似ている、もしくは、父親のあとを継いで同じことを目指したり、同じ職業についたりすることを指しています。
そう、良いことも悪いこともひっくるめて「父親を見習う」といった感じでしょうか。
この Like father, like son をひねって、
Like father, like daughter
という表現を耳にすることもあります。
「娘というものは、父親によく似るものだ」というわけですが、お父さんの子どもである以上、「息子」だけではなく、「娘」だって父親に似ることが多々あるのです。
もともとの格言ではありませんが、今では、堂々と市民権を得ているように思います。
それで、Like father, like son
そして Like father, like daughter を「お題」に選んだ理由は、
テムズ川を見下ろす老舗ホテルのロビーで、外から戻ってくる連れ合いと待ち合わせをしていると、背の高いスーツ姿の紳士と、若い中東系のオシャレな女性が近づいてきて、
Excuse me, but may I ask where you are from?
失礼ですが、どこからいらっしゃったか教えていただいてもいいですか?
といった質問をなさるのです。
最初は、いきなり声をかけられて驚いたのですが、話しているうちに、「この人、日本人かな?」と親しげにアプローチしてきたことがわかったので、
I’m from California, but originally from Japan
カリフォルニアから来ましたが、もともとは日本の出身です
と答えました。
なんでも、この方は、社交ダンスでルンバを楽しむ81歳の紳士で、年齢にあやかって81ヶ国の言葉を学んでいらっしゃるとか。
奥さんは「福岡から来た、ピアノの上手な女性」と写真も見せていただきましたが、学んだ外国語を忘れないようにと、日々ロンドンの老舗ホテルに足を向けては、外国人宿泊者やスタッフと言葉を交わすことを日課とされているそうです。
Today I spoke 18 different languages so far
今日は、これまで18ヶ国語を話しましたよ
とおっしゃっていましたが、こちらのロビーでも、スペインから来たスタッフとスペイン語を交わしたばかりで、連れの外国女性とはバーで出会ったばかりだとか。
日本語もかなり達者な方でしたが、この紳士が、いきなり尋ねるのです。
Are you a professor?
あなたは、大学の先生ですか? と。
どうしてそう聞かれたのかと疑問に思っていると、
You looked interesting
あなたは、なんとなく面白そうに見えた
と、なんとも漠然としたことをおっしゃいます。
それでも、わたしの父は何十年も大学で教鞭をとっていたので、「やっぱり、父親の雰囲気を受け継いでいるのかなぁ?」と恐れ入りながら、
Like father, like daughter
という言葉を思い浮かべたのでした。
まあ、ときどき「学校の先生ですか?」と聞かれたこともありますし、「お医者さん」と勘違いされたこともありました(アメリカには、アジア系のお医者さんが多いので)。
それでも、カジュアルなジーンズ姿で突っ立っていて、大学の先生(professor)かと聞かれたのは、意外な展開でした。
まさに Like father, like son
そして Like father, like daughter というのは、
姿かたちや口調、クセや習慣ばかりではなく、そこはかとなく漂う雰囲気だって「親によく似る」ということなんでしょうねぇ。
蛇足ではありますが:
こちらの紳士が足繁く通うロンドンの老舗ホテルは3つあって、お目にかかったサヴォイ(Savoy)のほかに、リッツ(Ritz)とウォルドーフ(Waldorf)があるそうです。
こういったホテルには、必ず外国人宿泊客がいるから、という理由なんでしょう(写真は、舞台が設けられたサヴォイのボールルーム(宴会場))。
リッツの創建者セザール・リッツは、パリのリッツ(ダイアナ妃が亡くなる直前に宿泊されていたホテル)を創業したことで有名ですが、なんでも、自分のホテルチェーンを築く前に、サヴォイの支配人を務めて腕を磨いた方だとか。
サヴォイの近くにあるウォルドーフは、ニューヨーク生まれでイギリスに帰化した実業家、ウィリアム・ウォルドーフ・アスター氏が創業したもので、幅広いビジネスのひとつとして、アメリカ風のホテルをイギリスで実現しようと意図されたとか。
サヴォイの創業は1889年、リッツは1906年、ウォルドーフは1908年と、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ロンドンをはじめとしてヨーロッパには華やかなホテルが次々と現れたようですね。
サヴォイには、丸いステンドグラスの天窓をいただくティールームもあって、ここでは、イギリス名物のアフタヌーンティー(afternoon tea)を楽しめます。
わたし自身はチャンスがありませんでしたが、朝の11時からと、午後1時、3時と、三交代制で予約が取れるそうです。週末には、まさに「満員御礼」でした!
ここでは、朝10時半まで朝食もやっていて、ギリギリで駆け込んだわたしがボ~ッと新聞を読みながら、フルーツサラダを食べていると、商談をするグループを何組も見かけました。
どのテーブルにも女性のビジネスパーソンがいらっしゃいましたが、「ビジネス・アフタヌーンティー」とは、レディーならでは! のオシャレな発想でしょうか。明るくゴージャスな雰囲気では、きっと商談もスムーズに進むことでしょう。