English words
英語ひとくちメモ/場面
English Words 英語ひとくちメモ
2010年12月12日

Official Language(公用語)

今回は、ちょっと趣向を変えて、英語の表現ではなくて、英語自体のお話をいたしましょう。

なぜって、先日、ちょっとびっくりすることがあったからです。

病院で定期検診を受けたのですが、「大丈夫でしたよ」という検査結果のお手紙が、3カ国語で書かれていたのです。

そう、英語、スペイン語、中国語の3カ国語で。

もともとカリフォルニアにはスペイン語を話す人は多いので、今までは、英語とスペイン語ふたつの文面で病院からお手紙が来ていたのです。

けれども、今となっては中国語の話し手が患者に増えたのか、それとも中国語を書いたり印刷したりする方法が広く伝授されたのか、病院からのお知らせにも、とうとう中国語が登場するようになったのでした。


そして、そんなことで驚いていると、今度は、家にこんなハガキが舞い込みました。

なんでも、近くの幼稚園が「オープンハウス」をするので、授業の様子を見に来てくださいという宣伝ハガキなのですが、それが、中国語で書かれているのです。
(「オープンハウス(open house)」というのは、会社や学校など、普段は外部の人が入れない場所を公開して、家族とか関係者に見に来てもらうことですね。)

どうやら、英語と中国語のバイリンガル(bilingual)の幼稚園のようで、おもに中国系の家族をターゲットとしたものなのでしょう。
 でも、いきなり見慣れない中国語のハガキをもらったので、こちらとしては、ちょっとびっくりしてしまったのでした。

近年、家のまわりには中国系の人たちが増えたなぁとは思っていましたが、まさか、すぐそばに中国語のバイリンガルの幼稚園ができていたなんて。

我が家のまわりは、もともと白人ばかりのコミュニティーだったのですが、最近、ヴェトナム系、インド系、その他の外国からの移民(immigrants)が増えてきて、「カラフル」なコミュニティーになってきていることは確かです。

ですから、外国語の宣伝ハガキをもらっても、驚くほどのことではないとは思うのですが・・・。


そこで、英語の話にうつりますが、実は、英語というのは、アメリカの法的な公用語(official language)ではないのです。

意外なことに、アメリカでは自国語(national language)というものが法律で定められていないので、英語はあくまでもそれに準じるもの、ということになるのですね。

まあ、そうは言っても、アメリカのほとんどの人は英語を母国語としたり、少なくとも話したりできるので、英語が公用語化して、事実上の公用語(de facto official language)となっているのは確かです。
 だって、議会で話したり、国が書類を作成したりする言語がないと不便ですから、それは英語、ということになっているのですね。

けれども、アメリカの複雑な部分は、国と州は違うという点でしょうか。

そう、国には公用語が定められていなくても、州によっては公用語がある州もあるのです。
 たとえば、カリフォルニア州も英語を公用語に定めていて、そういう州は、全米で30州近くあります。

その一方で、ニューヨークやマサチューセッツ、フィラデルフィア、それから西海岸のワシントン、オレゴンなど、州の公用語が定められていない場所もあります。

おもしろいもので、ニューヨークでは1920年代まで、州の公文書は英語とオランダ語で書かれていたそうです。
 ニューヨークの辺りが最初はオランダの植民地だった歴史からきているそうですが、そんななごりで、今でも英語が公用語にはなっていないのでしょうね。

ジャズの発祥地、ニューオーリンズのあるルイジアナ州も、法的に公用語を定めていない州のひとつですが、ここでは、英語とフランス語が公的に使われているそうです。こちらは、もともとフランス領でしたからね。


そんなわけで、アメリカは広い国ですので、州によって言葉や習慣など違う面が多いのです。が、もっと複雑なことに、同じ州の中でも、みんなが一緒というわけではないのです。
 英語が公用語であるカリフォルニア州内でも、英語以外の言語を公用語のひとつに定めている自治体もあるのです。

たとえば、わたしが住むサンノゼ市などは、市の公用語は英語、スペイン語、ヴェトナム語の3カ国語となっております。
(そう、3つ目は中国語ではなくてヴェトナム語なので、中国語のハガキをもらって余計にびっくりしたのでした。)

ですから、サンノゼ市からのお知らせは、英語、スペイン語、ヴェトナム語の3カ国語で書かれています。


さらに、おもしろいことに、英語を公用語に定めていたとしても、カリフォルニアのように、選挙(election)のときには英語のみを使うことを禁じている州もあるのです。

たとえば、カリフォルニアでは、ある言語を話す住民が郡(county)の人口の3パーセントを超える場合は、その言語で投票案内や投票用紙を印刷することが法的に定められています。

ですから、サンノゼ市のあるサンタクララ郡では、英語、スペイン語、ヴェトナム語の他に、中国語とタガログ語(フィリピンの言葉)で投票することができるのです。
(選挙管理は、郡のレベルで行われるので、郡ごとにどの言語を使うかが定められています。)

なにせ、シリコンバレーのあるサンタクララ郡は、選挙登録した有権者(registered voters)の4割が移民だそうなので、英語だけでは民主的(democratic)ではない、アメリカの思想に反する、というわけですね。

そして、カリフォルニア州全体になると、日本語だって登場するんですよ!

南カリフォルニアのロスアンジェルス辺りには、日本語を母国語とする住民が多いのだと思いますが、そんなわけで、州が発行する選挙の説明書は、日本語もありなんです。

ちなみに、アメリカでは、米国市民(U.S. citizens)が選挙権(voting rights)を持つわけですが、事前に登録をしないと選挙ができない仕組みになっています。ですから、選挙権があったにしても、何らかの理由で登録をしない(つまり投票できない)人が少なくないのです。

そんなわけで、外国語しか話せない市民が、英語のみの選挙を嫌うことがないようにと、彼らが母国語で投票する権利が認められているのですね。
(カリフォルニアだけではなく、多くの州でそうなっているのだと思います。なんといっても、アメリカは移民の国ですから!)


というわけで、なかなか複雑なアメリカの言語事情ではありますが、やはり、みんなが理解できるのは、英語。

これなしには、アメリカのみんなが互いを理解することは難しいのです。

さすがにカリフォルニア辺りでは、外国語が聞こえてきたにしても、Speak English!(英語を話しなさい)というお叱りはありません。

けれども、移民が少ない場所では、外国語を声高に話していると、English only, please!(英語だけにしてよ)と怒られそうですよね。

(実際、どこかで耳にしたことがありますよ。たしか、中国語の話し手のグループに向けられていたような・・・きっと声が大き過ぎたのかもしれませんね。)


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