Radicchio(トレビス)
<英語ひとくちメモ その154>
今日は、野菜の名前のお話です。
先日、オープンしたばかりの「ららぽーと福岡」に見学に行ったあと、1階のスーパーマーケットでお買い物をしました。
長年アメリカで朝食のサラダに愛用していた、紫色の野菜を発見! 喜んで買ってきました。
翌朝、サラダをつくろうと封を開ける段になって、びっくり。ラベルには、今まで知っていた名称とは違って「トレビス」と印刷されているのです!
今まで呼んでいた名前は、Radicchio(発音は「ラディキオゥ」といった感じで「ディ」にアクセント)。
英語の名称からすると、イタリア原産のようですが、日本ではトレビスと呼ばれるんですね。
Radicchio は、アメリカのスーパーマーケットではよく見かけるチコリ(Chicory)の一種ですが、レジの担当者は名前を知らない場合も多く、こちらから教えてあげることの多いトリッキーな野菜です。
そう、アメリカのレジでは「これって何ですか?」と聞かれることがよくありますが、それは野菜や果物の種類を正しく特定し、リストの中から登録番号を探してレジに打ち込むため。
個数売りの多い日本と比べて、量り売りの多いアメリカでは、似たような種類でもグラム当たりの値段が違うことがありますから、正確な名称の特定が必要になるのです。
こういう時のために、こちらもちゃんと名前を知っておいた方がいいですよね。
この Radicchio と同じく、以前も戸惑ったことがありました。
東京でお世話になっている美容師さんが、自宅で野菜を育てているというお話をなさっていて、生でサラダなどにするといった内容から、どうも Arugula ではないかと思ったんです。
すると、「いえ、違います。そうそう、ルッコラ でした」とおっしゃるのです。
そうなんです、日本語のルッコラは、英語では Arugula と呼びます(「オルーガラ」といった感じで「ルー」にアクセント)。
ちょっと苦味があって、小さいわりに存在感のある葉物野菜です。
そして、近年ヴェトナム料理のフォーなどで人気の パクチー。
こちらの英語名は、 Cilantro(「シラントゥロゥ」といった感じで「ラン」にアクセント)。
Cilantro といえば、わたしが生まれて初めて出会ったのは、インドネシア人のクラスメイトが郷土の手料理を食べさせてくれたとき。
何これ? と、独特の香りにむせかえったものでしたが、今では、山盛りでも食べられるほど大好きになりました。そう、慣れてみると、なくてはならない食材なのです。
Cilantro は、アジア圏だけではなく、メキシコ料理でもライムとともに味にアクセントをつける必需品です。
今でも親しくメールをやり取りするカリフォルニアのご近所さんは、「わたしは自分でもメキシコで生まれたんじゃないかと疑うほど、Cilantro が大好きなのよ」とおっしゃいます。
というわけで、日本の呼び名と英語圏の呼び名がまったく違う野菜がいくつかあって、海外のお店で見かけると「おかしいなぁ」と思われることもあるでしょう。
けれども、大部分の野菜は、日本でもよく知られるポピュラーな呼び名ですね。
ジャガイモ(ポテト)は、Potato(「ポテイトウ」と発音には要注意です)
キャベツは、Cabbage(最初にアクセントつきの「キャベッジ」)
レタスは、Lettuce(「レタス」もしくは「レラス」と聞こえる場合あり)
ほうれん草は、Spinach(どちらかというと「スピニッチ」でしょうか)
玉ねぎは、Onion(こちらはストレートに「オニオン」)
人参は、Carrot(こちらもストレートに「キャロット」)
ただし、アメリカで「キャロット」とか「キャベッジ」と言う場合は、「キャ」の音に要注意ですね。「アップル」のように、「ア」と「エ」の中間の音になります。
(ちなみに、上の写真はジャガイモを使った人気レシピ、スペインオムレツ(Spanish omelette)。連れ合いの力作です!)
一方、近年は、海外でも日本の野菜が人気になっていますね。
たとえば、大根などは、かなり前からアメリカの普通のスーパーマーケットでも売られています。そう、日系ではない大規模店でも、野菜のセクションに堂々と並べられています。
大根は、Daikon または Daikon radish(ダイコン ラディッシュ)といいます。
文字通り、「ダイコン」とか「ダイコン カブ」といった呼び名です。
白菜は、Napa cabbage(ナッパ キャベッジ)と呼ばれます。
Napa は「菜っ葉」という意味で、キャベツの一種であるという理解でしょうか。
Napa の字だけ眺めていると、ワインの名産地「ナパバレー(Napa Valley)」のようでもありますが、白菜の方は「ナッパァ」という風に呼ばれます。
大根と白菜は、もっとも早くから海外で栽培されるようになった日本の野菜だと思われます。日系のお店に行くと、大根や白菜の種も販売しているので、昔から日系コミュニティでは畑や家庭菜園で育てていた大事な作物であることがうかがい知れます。
白菜のことを Bok choy(発音は「ボックチョイ」)と中国風に呼ぶこともあります。白菜は中国でも使われる野菜ですからね。
この Bok choy が Baby Bok choy となると、青梗菜(ちんげんさい)になります。
白菜よりも小さいので、「赤ちゃんの白菜」といった呼び方でしょうか。
中華料理店に行くと、よく青梗菜が使われているので、メニューを見るときに覚えておくと便利でしょうか。
近年、アメリカでも知られるようになった水菜(みずな)は、大根と同じように、そのまま和名が使われます。
Mizuna です。
発音は「ミズーナ」といった感じで、「ズ」にアクセントがつきます。
いつかお店で水菜を選んでいると、日系アメリカ人の店員さんに「ミズーナはスープにするのかい?(Are you making soup with mizuna?)」と聞かれたことがあります。
我が家では、ちりめんじゃこと一緒に生で食べることの多い水菜。でも、もしかすると、日系の方々の間ではスープにするのが伝統的な調理法なのかもしれませんね。
アメリカのレシピを見てみると、生のままサラダにすることが多いようですよ。水菜は、比較的クセが少ないので、生でも食べやすい葉物野菜ですよね。
アメリカは野菜嫌いの人が多いので、オススメ食材なのかもしれません。
そんなわけで、日本の名称とアメリカの呼び名がまったく違う野菜があったり、海を渡った先で、日本の野菜がそのままの名で呼ばれていたり、物の名前は、いろいろと難しいのです。
こちらの看板は、サンフランシスコの海沿いにあるフェリービルで見かけたもの。1階のデリカテッセンで「日本のアイスクリームがあるよ」と宣伝する看板です。
Matcha(抹茶)とか Hojicha(ほうじ茶)という文字が見えるので、日本のお茶を使って風味を出しているのでしょう。
とくに抹茶風味は、アメリカで大人気ですから、看板につられて足を止める人も多いかもしれません。
平仮名の「すごい!」という文字が微妙に丸っこいので、アメリカ人の店員さんが書いたのかもしれませんね。
一方、こちらは Kombucha(昆布茶)と書かれた看板です。
こちらもサンフランシスコのダウンタウン地区で見かけたものですが、これがちょっとクセモノなんです。
日本の昆布茶というと、粉末状になった昆布をお湯でとかしてお茶にするもの。が、英語で Kombucha というと、緑茶や紅茶に昆布を入れて発酵させた、中国風のお茶のこと。
看板には Local raw Kombucha on tap! と書いてあるので、自家製の発酵したての昆布茶を樽からついでくれるのかもしれませんね。
なんでも、Kombucha は中国からロシア、東ヨーロッパへと広まり、世界各地で人気になった飲み物だそうですが、日本の昆布茶を想像して注文すると、え? とびっくりしてしまうかも。
名前につられて買ってみると、中身が違う。注文してみると、こちらが考えているのとは違った物が出てきた。異文化の間では、そんなことも多いですよね。
わたしもイタリアでカフェラテ(cafe latte)を頼んだら、ミルク(latte)が来たことがありました。アメリカでは latte と省略することが多いので、ついついクセが出たんです。
でも、そんなミスがまた、面白いんですけれどね!
<追記>
余談ではありますが、野菜や果物の名前についてスーパーマーケットの店員さんとやり取りした話を掲載したことがありました。
こちらのマーケットは、世界各地の野菜や果物を取り入れていて、レジの打ち込みも種類が多くて大変なのです。
ここにも登場していますが、日本語の名称がそのまま英語で使われている代表格としては、椎茸(しいたけ)がありますね。どちらかというと、「シイタケ」よりも「シイラキー」という風に聞こえますけれど。