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英語ひとくちメモ/おもしろ表現
English Words 英語ひとくちメモ
2024年09月16日

Registered to vote(有権者登録は済んでいる)

<英語ひとくちメモ その177>

アメリカでは9月10日(日本時間9月11日)、大統領候補者の討論会が開かれましたね。


4年に一度の大統領選挙。今回は、11月に開かれる選挙に向けて、大どんでん返しがありました。


そう、7月下旬になって、現職のバイデン大統領が再選をあきらめ、副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党候補に選ばれたこと。現職大統領が再選に出馬しないのは、非常に珍しいことなのです。


共和党候補のドナルド・トランプ前大統領とハリス副大統領が対決する討論会でしたが、おおかたの見方は「ハリス氏が勝った」というもの(討論会を開催・放映したABCの視聴者調査によると、53%対25%で、ハリス氏を討論会の勝者とした人が圧倒的に多かったです)。


そして、討論会の直後、人気シンガーソングライターのテイラー・スウィフトさんがハリス氏支持を表明するニュースが流れました。


すると、「スウィフトさんがインスタグラムに掲載したリンクを経由して、国の有権者登録サイト(vote.gov)にアクセスした人が33万人を超えた」というニュースも流れました。



そう、今日の話題は、この「有権者登録」です。


有権者登録は、英語で voter registration といいます。


文字どおり、「投票者のための登録」といった感じです。


そして、「あなたは、有権者登録は済んでいますか?」という質問は、このようにいいます。


Are you registered to vote?


そう、registered to vote というのは、投票するために正式な登録を済ませている、という意味になります。


この質問に対しては、


Yes, I’m registered to vote(はい、わたしは有権者登録を済ませています)


No, I’m not.  I’m not a U. S. citizen(いいえ。わたしは米国市民ではありません)


という風に答えます。


アメリカでは選挙が近づいてくると、公園や人通りの多い道路脇で有権者登録の勧誘員からこのような質問をされることがあります。ですから、YesNo で答える必要がありますね。



そうなんです、この有権者登録のシステムは、日本と大きく違うところですよね。


英語のお話からはそれてしまいますが、ここでちょっとご説明しておきましょう。


日本の場合は、住民登録(住民票)制度(resident registration)があるので、有権者には自動的に自分が住む市区町村から投票の案内が送られてきます。そして、このハガキを持って投票所に行って投票する。


アメリカの場合、住民登録という概念がないので、投票権を持つ米国市民は、自身で地方自治体に登録しなければなりません。そう、役所に「おまかせ」では、投票できないんです。


この場合の自治体は、州(state)ではなく、州下にある郡(county)となり、自分の住む郡に登録をすることになります。


そう、選挙を司るのは、郡の役所の仕事となります(結婚証明書なども郡の役所が発行し、土地・建物の売買契約なども郡に登録します)。


たとえば、カリフォルニア州では、テクノロジー企業が集まる「シリコンバレー(Silicon Valley)」最大のサンノゼ市は、サンタクララ郡に属しますので、サンノゼ市やクーパティーノ市(アップルの本社が置かれる)など15都市の市民は、サンタクララ郡に有権者登録をします。


サンフランシスコ市は、自分の市だけで郡を構成するので、市民はサンフランシスコ市・郡に登録をします。(こちらはサンフランシスコの選挙課が郵送した選挙案内で、差出人は City and County of San Francisco となっています)


ちょっと信じられないことですが、有権者登録をする際には、自分は何党の支持者か(party affiliation)を明言します。


大きなくくりでは、Democratic(民主党支持者)、Republican(共和党支持者)、Independent(どちらでもない)となります。


どうしてそんな明言をするかというと、アメリカには予備選挙(primary election)というのがあって、本選(general election)の前に党内の候補者の中から最終的な候補者を選ぶことがあるからです。


サンタクララ郡などは、投票所に行くよりも、郵送による投票(voting by mail)を推奨しているので、予備選挙が近づくと、民主党支持者用の投票用紙、共和党支持者用の投票用紙と、それぞれの支持政党の候補者が書かれた用紙が送られてきます。


投票用紙を入れる封筒も民主党支持者用がブルー、共和党支持者用がピンクと色分けされていて、開票がスムーズに運ぶように工夫されています。


以前は、封筒に切手を貼らないといけなかったので、切手を買おうと郵便局に並んでいるだけで、封筒の色で何党の支持者かわかってしまいました!


一方、「支持政党がない」と明言した人は、予備選挙のたびに、どちらかの党の投票用紙を取り寄せることになります(支持政党なしの友人いわく「めんどくさい!」)。


そう、無党派層にはめんどくさいこともありますが、もともと自身で有権者登録をするのも、かなりめんどくさいシステムではあります。


ですから、18歳になって選挙権を与えられても、登録しない若者も多いので、公園で登録を促す担当者が現れるのです。


米国市民権を得る宣誓式などでは、ここで一気に新しい市民の有権者登録をさせる郡もあります。


そして、ひとたび登録したとしても、予備選挙、本選挙と二回続けて投票しなかった場合、登録が抹消されることもあるので、登録して安心するのではなく、投票の義務も遂行しなくてはならない、というシステムになっているのです。



というわけで、関心を集める有権者登録、voter registration


米ABCが開催したドナルド・トランプ前大統領とハリス副大統領の討論会は、ネットですべて観させていただきました。


正直に申し上げて、「大統領候補者の討論会としては、レベルが低い!」というのが、わたし自身の感想でした。


いえ、トランプ氏のレベルの低さにハリス氏が合わせてしまって、せっかくのハリスさんのウィットに富んだ毒舌の矛先もちょっと鈍ったか、と。


そうなんです、わたしはハリスさんの出身地であるサンフランシスコ・ベイエリアに長らく暮らしていたので、彼女が州の司法長官となり、州選出の連邦上院議員となり、やがては副大統領となる政治家としての成長ぶりを見てきました。(写真は、2016年11月の選挙で上院議員に当選したときの投票用紙。左の投票用紙に Kamala D. Harris の名が)


もともとハリスさんは検察官なので、もっと鋭い発言を期待していたのですが、それにしても、トランプ氏のレベルの低さよ!


「国境を越えてオハイオ州スプリングフィールドにやって来た移民は、犬や猫を食べている」という発言が取り沙汰されましたが、ほんとに、小学生のようなこんな発言をしています。


They’re eating the dogs. They’re eating the cats. They’re eating the pets of the people that lived there

彼ら(移民)は犬を食べている。彼らは猫を食べている。彼らは住民のペットを食べているんだ


このような発言も飛び交う討論会でしたが、ハリス氏の支持率がグンと上がったかというと、そうでもありません。


アメリカ人はいったい何を考えているのだろう? と疑問に思うことも多いですが、これから11月5日の投票日に向けて、さらに二転三転あることでしょう。


アメリカの大統領選は「選挙人団(Electoral College)」という制度をとっていますので、完全な国民投票とはいえないまでも、有権者ひとりひとりが大統領候補者に票を投じることができます。そして、有権者が投票してくれることに Thank you for voting と自治体も感謝の気持ちを表します。


国の舵取りをする「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」と憲法で定められている日本よりも、ずいぶんと民主的であることは確かですよね。



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