Stop, Drop and Roll(火事の時には)
<英語ひとくちメモ その152>
英語の文章って、リズミカルな音の羅列ですよね。
わりと平坦な日本語と比べて、リズムも音程も「歌」に近いと言ってもいいくらい。自然と体が動きやすい、メロディアスな言語かもしれません。
そんな言葉を話す英語圏の方々って、語呂のいい表現がお好きなんですよね。
中でも、テレビコマーシャルなどは、語呂のいい表現を耳にする媒体でしょうか。
こんなものがありました。
Gotta
Getta
Jetta
まるで、おまじないのようですが、車会社のフォルクスワーゲンが「ジェッタ(Jetta)」というモデルのCMで使っていたフレーズです。
アメリカ英語の発音を日本語で表すと、「ガラ、ゲラ、ジェラ(ジェッタ)」みたいに聞こえます。
「ジェッタを買わなくっちゃ(Got to get a Jetta)」と小気味よいフレーズで、人々の脳裏に車の名前を焼き付けているのです。
ちょっと古いものでは、こんなものもありました。
Fill it to the rim
With Brim
こちらは、コーヒー豆やインスタントコーヒーを販売するマックスウェル・ハウスが出した「ブリム(Brim)」というブランドのコマーシャル。
当時は珍しかったカフェインレスのコーヒー(decaffeinated coffee、通称 decaf coffee、デカフェ)を売り出そうと、ブリムという新ブランドを立ち上げました。
「(カップの)縁(ふち)まで、ブリムを注ぎましょう」と、rim(縁)と Brim の語呂合わせで、商品名を覚えてもらっています。
わたしが今でも覚えているということは、かなり印象に残る、効果的なCMフレーズだということでしょう。
ことわざの中にも、語呂のいいものが多いですね。
たとえば、こちら。
You snooze, you lose
日本語で書くと、「ユースヌーズ、ユールーズ」。
「居眠りをしていると、あなたは負ける」というわけですが、グズグズしていると、チャンスを逃してしまうよ、といった意味になります。
そして、英語の詩では、「韻(いん)を踏む」ことが重んじられ、似たような響きの言葉が繰り返し使われることも多いです。
とくに、子供向けの童謡は nursery rhyme(ナースリー・ライム)と呼ばれていて、rhyme(韻を踏むこと)が大切にされています。
それは、上に出てきたコマーシャルのフレーズでもわかるように、耳に響きの良いものが頭に残りやすいので、子供たちが言葉について学んだり、内容に興味を持ってもらったりと、教える上で効果的とされるからです。
ここでは童謡自体のご紹介はいたしませんが、たとえば「Mary Had a Little Lamb(メリーさんの羊)」や「If You’re Happy and You Know It(幸せなら手をたたこう)」などは、アメリカから日本にも波及した有名な童謡となっていますね。
ここで、表題の登場です。
Stop
Drop
And Roll
こちらは、とても語呂のいい、覚えやすいフレーズになっています。
「ストップ、ドロップ、ロール」とは、火事に直面した際、子供たちにどう対応したらいいかを教えるフレーズです。
「ストップ(動きを止めて)ドロップ(地べたに伏せて)そして、ロールする(地べたでゴロゴロ転がる)」と、万が一、服に引火した際の手順を覚えさせているのです。
イラストは、アメリカの連邦消防局がウェブサイトに掲載しているもの。あんまりかわいくないですが、かなりリアルに頭に入ってくるイラストですよね。
近頃は、このフレーズにもう一文加わっています。
Stop
Drop
And Roll
And Cover Your Face
顔を火傷しないように、「顔を(手で)覆いなさい」という一文が加わっています。上のイラストでも、まずは顔を覆って、地べたに伏せ、転がっているのがわかります。
まあ、日常生活で火事に遭うことは少ないですが、たとえばキャンプに行って、大好きなマシュマロをキャンプファイアで焼いている時、火の粉が降りかかって服に引火することはあるかもしれません。
そんな場面で、とっさに Stop, Drop and Roll (and Cover your face)を思い出してもらえるようにと、子供たちに教えているのです。
似たようなフレーズに、こんなものもあります。
Drop
Cover
And Hold on
こちらは、地震の際、誰もが思い出すべきフレーズです。
上のフレーズを長い文章にすると、こんな感じになります。
Drop where you are, onto your hands and knees
Cover your head and neck
Hold on until the shaking stops
その場で地べたに四つん這いになって
(机の下にもぐるか、手で)頭と首を覆って
揺れが止まるまで、じっとしていなさい
「とにかく、揺れが来たら動きまわるのは危ないので、頭に何かが当たらないように注意しながら、揺れがおさまるまでその場で待っていなさい」という指示なのでした。
ちなみに、Drop, Cover and Hold on のイラストは、日本と同じ地震国であるニュージランド政府が出しているものです。
そして、同じく地震国(earthquake country)と称するカリフォルニア州では、こちらのフレーズも推奨しています。
Lock
Cover
And Hold on
車椅子やウォーカーの車輪をロックして
前かがみになって、両手で頭と首を覆って
揺れがおさまるまで、じっとしていなさい
と、車椅子や車輪付きウォーカーを利用する方々に向けたフレーズも告知しています。
そう、杖をついている方々には、Drop, Cover and Hold on で良いのですが、車椅子やウォーカーを利用する方々には、Lock, Cover and Hold on と違ったフレーズを推奨しているのです。
ちなみに、ベッドに寝たきりの方々には、
Cover your head and neck with your arms or pillow until the shaking stops
揺れがおさまるまで、頭と首を両腕か枕で覆ってください
と、アドバイスしています。
というわけで、英語の表現は語呂も良く、緊急対応のフレーズも覚えやすいです。
Stop, Drop and Roll
Drop, Cover and Hold on
もしかすると、火事や地震への対処法は、英語で覚えておいた方がとっさに思い出しやすいのかもしれませんね。