Take pride(誇りに思う)
久しぶりの英語のお話となりますが、7月初めには、アメリカのポピュラーな祝日がありましたよね。
そう、7月4日の独立記念日!
英語では、Independence Day
もしくは、その日付から、the Fourth of July(4th of July)とも呼ばれます。
この日は、厳密には「アメリカが独立した日」ではなくて、イギリスから独立する気運を高めようと、『独立宣言(the Declaration of Independence)』を議会で採択した日です。
そう、イギリスの植民地だったアメリカ(東部13州)が独立しようと、大英帝国を相手に戦った「独立戦争(the American Revolutionary War)」のさなかに採択された宣言。
戦争の火ぶたが切られた翌年、1776年7月4日に第2次大陸会議(Second Continental Congress)で採択されたので、この日が「独立記念日」とされています。
それでも、大英帝国は強かった!
1783年、パリで平和条約が結ばれるまで戦争は8年も続いたのですが、この戦争終結を「独立の日」とするよりも、独立宣言を採択した日の方が、アメリカ人にとっては意義のある日だったのでしょうね。
そういう意味では、フランスで祝われる7月14日(ちょうど今日!)の「パリ祭」に似ているでしょうか(英語では Bastille Day:バスティーユ・デイ)。
革命が終結した日を祝うのではなく、1789年、民衆がバスティーユ牢獄に攻め入り革命の幕開けとなった「バスティーユ襲撃」を建国と記念する日。
それで、ちょっと歴史のお勉強になりますが、アメリカ人にとって意義のある独立宣言には、こんなことが盛り込まれています。
人は平等に生まれ、人として生きる権利が与えられるべきなのに、大英帝国の植民地である自分たちには、ジョージ3世(当時のイギリス王)に正当な権利を認めてもらっていない・・・、といったイギリスに対する恨みつらみの箇条書き。
だからこそ、我々はイギリスから独立しなければならないんだ! と。
でも、一番有名なのは、こちらの冒頭の部分です。
「すべての人は平等につくられ、わたしたちには、生命(Life)、自由(Liberty)、幸福の追求(the pursuit of Happiness)といった侵さざるべき権利が創造主によって授けられている」という独立の主文。
WE hold these Truths to be self-evident, that all Men are created equal, that they are endowed by their Creator with certain unalienable Rights, that among these are Life, Liberty, and the pursuit of Happiness –
これに続いて、「これらの権利を守るために、人々の合意のもとに政府がつくられるが、もしも政府が権利の妨げとなった場合は、人々には政府を変革するか、今までの体制を捨て去り新しい政府を樹立するかの権利が与えられている(後略)」と、イギリスを政府として頂くことを止める決意が記されています。
That to secure these Rights, Governments are instituted among Men, deriving their just Powers from the Consent of the Governed, that whenever any Form of Government becomes destructive of these Ends, it is the Right of the People to alter or abolish it, and to institute new Government. . .
実は、この独立宣言は、イギリス王に突きつけた文書ではなくて、戦う仲間の士気を鼓舞しようと書かれたものなので、実際にあちらこちらの戦場に持って回ったのでした。
ですから、オリジナルの文書はボロボロになってしまって、現在、公文書記録管理局に展示されている文書(上の写真)は、あとで書き直したものなんだそうですよ。
というわけで、7月4日の独立記念日。
実際には、独立宣言が採択されたのは7月4日ではなく、8月2日だったという説も有力だそうですが、「7月4日が国の誕生日」という決め事に変わりはありません。
この日は、街の目抜き通りで開かれるパレードを見物したり、家族や仲間たちとバーベキューをしたりと、楽しく過ごす夏の一日となります。
(こちらの写真は、インテリア・ガーデングッズのFront Gateというお店の商品カタログ。子供たちがとっても楽しい雰囲気なので、拝借させていただきました)
それから、もちろん、夜の花火も忘れてはいけませんね。
カリフォルニアでは、ほとんどの自治体で自宅の花火は禁止されているので、みなさん街の花火大会を楽しみにしています。
サンフランシスコ・ベイエリアでは、残念ながら、サンノゼ市主宰の花火大会が数年前に不景気で中止となりましたが、サンフランシスコ市の花火大会は、いまだ健在!
毎年、観光名所のピア39(39番埠頭)で開かれる夏の花火大会には、近隣のコミュニティーから何万と人が集まります。今年は、地下鉄BARTのストライキのせいで、見物人の足も鈍ったようですが、サンフランシスコ名物の霧も影をひそめ、美しい花火が観られたと好評でした。
わたしは、近所のコミュニティー主宰の小さな花火大会に出向きましたが、どんなに小さくたって、やっぱり、花火は間近で楽しむもの。だって、迫力が違いますものね!
そして、夜空に打ち上げられる華やかな花火を見つめていると、みんなの心には「誇り(pride)」がよみがえるのです。
そう、アメリカ人としての誇り。
独立記念日の花火は、
I take pride in being an American
わたしはアメリカ人であることを誇りに思う
と、誇らしい気分になる瞬間なのです。
(take pride in ~ は、「~を誇りに思う」という慣用句)
それは、どんな肌の色であろうと、どんな宗教であろうと、どこからやって来ようと、独立を祝うアメリカ人が、みんなで共有する誇り高い瞬間なのでしょう。
ニール・ダイアモンドの『America (They’re coming to America)』といった歌もバックに流れ、愛国心たっぷりの花火の音楽は、ますますみんなの誇りをかきたてるのです。
個人的には、独立記念日は、アメリカが一番輝く日だと思っているのです。
追記: 蛇足ではありますが、アメリカの『独立宣言』は、『日本国憲法』でも参考にされていますね。
「生命、自由、幸福の追求」といった国民の権利は、第3章・第13条「個人の尊重」に「最大の尊重を必要とする」ものとして列記されています。
そして、「人々の合意のもとに政府がつくられる」といった概念は、日本国憲法の「前文」に、このように明記されています。
「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と。
それから、もうひとつ蛇足ではありますが、アメリカの花火大会で好んでかけられるブルース・スプリングスティーンの有名な歌『Born in the U.S.A.』は、必ずしも愛国心満点の歌ではないようです。
花火大会では、どちらかというと歌詞のないメロディーだけの演奏が使われる場合が多いようですが、歌詞は、ヴェトナム戦争(1975年終結)から帰らなかった友や、帰還兵の苦悩を描いています。
なんとなく、歌で連呼される Born in the U.S.A.(僕はアメリカで生まれた)という部分から、愛国の歌かと勘違いしていたのですが、スプリングスティーンの大ファンである友が「反戦的な労働階級の歌」だと教えてくれました。
教えてくれた直後に、彼も逝ってしまったのですが、「アメリカ人だって、多くの人は勘違いしているみたいだよ」と、アメリカ通らしく語ってくれました。