Warm and fuzzy(ほっこり)
<英語ひとくちメモ その153>
6月に入って、日本への入国制限も少し緩和され、外国人観光客も増えていくきざしです。
そんな中、英語に興味のある方だったら、こう感じることも多いでしょう。
これって、英語ではどう言うのだろう? と。
たとえば学術的な用語だったら、「これしか訳せない」という言葉があって、それを調べて覚えればいいでしょう。
けれども、ちょっと難しいのは、心の中を表す感情的な表現かもしれません。
たとえば、「ほっこりする」というような漠然とした感情をどう表したらいいんだろう?
ここで思いつくのは、warm and fuzzy という言葉。
「暖かくって(温かくって)ふわっとしている」というわけですが、なんとなくほっこりするような安心感を表す形容詞です。
別の形容詞を使うと、comforting(ほっと安心させるような)とか content(満足する)といった感じでしょうか。
I still get a warm and fuzzy feeling whenever I visit my hometown
今でも故郷の街を訪ねると、ほっこりした気分になります
もともと warm という形容詞には、気温や水温が暖かいという意味に加えて、人の心が温かいという意味もあります。
I always receive a warm welcome whenever I visit my hometown
故郷の街を訪ねると、いつも(まわりのみんなに)温かく迎えられます
そして、fuzzy という形容詞には、「ぼやっとした」「あいまいな」という意味に加えて、「ふわふわとした」という感触的な意味合いもあります。
たとえば毛で覆われている小動物のように、輪郭や体つきがはっきりしないモコモコ、ふわふわした感じをさします。
ですから、warm and fuzzy で「温かくてふわふわしている」、つまり「ほっこりして気持ちがいい」といった意味になります。
なんでも warm and fuzzy は、その昔、織物業界の人たちが生地の風合いを表すために使っていた言葉だそうで、いつの間にやら、比喩的に感情を表現する時に使われるようになったとか。
たぶん、日本語の「ほっこりする」という言葉も、もともと綿のような風合いを表していたのでしょうから、英語の「感触、風合いから感情表現に転用」という言葉の変遷と似たようなものかもしれませんね。
ちなみに、warm and fuzzy は形容詞でもあり、名詞でもあります。
My cat gives me warm and fuzzies
僕の猫を見ていると、ほっこりするよ
といった感じに使います。
一方、こんな時は、どんな風に言えばいいでしょうか。
「なんかあの人、のらりくらりしていて、はっきりしないのよねぇ」といったケース。
そういう時には、
He is wishy-washy
と言ってもいいかもしれません。
この不思議な形容詞 wishy-washy ですが、発音は「ウィッシーウォッシー」といった感じで、「なかなか決断できない」「中身の薄い」「性格が弱い」というような意味になります。
見ていてこちらがモヤモヤしてしまうような、昨日と今日で言うことがコロコロ変わるような、のらりくらりと何でも先延ばししてしまうような、そんな優柔不断な性質を表します。
この wishy-washy の washy という部分は、お茶やスープが薄いという風に、「水で薄めたような」という意味があります。
どうやらシェイクスピアの晩年の時代にはすでに使われていた言葉のようで、おそらく当初は「このお茶は薄くて、飲めたものじゃないわ」といった場面で使われていたのでしょう。
それがどうして wishy-washy となったのかはわかりませんが、最初は物の状態を表す言葉だったものが、人の性格にも転用されるようになったのでしょう。
ちなみに、以前もご紹介したことがありますが、wishy-washy と同じようにハイフンでつながった言葉には、こんなものもあります。
誰かが「ダラダラする」という言葉で、dilly-dally。
発音は「ディリダリー」といった感じで、日本語の「ダラダラ」と似ていますよね。たぶん、ハイフンでつながった言葉は、前と後ろの語呂がいい点も大事なんでしょう。
こちらの dilly-dally は動詞になりますが、こんな風に使います。
Don’t dilly-dally!
ダラダラしてはいけません!
Quit dilly-dallying already!
そろそろダラダラするのをやめなさい(心を入れかえなさい)!
性格的に wishy-washy な人と、ダラダラと dilly-dally している人。
どちらも、自分が言われたら嬉しい言葉ではありませんが、知っていて損はないと思います。
それから、こんな時には、どう言えばいいでしょうか。
「あの人って、うっとうしいのよねぇ」
なんか必要もないのに、ゴチャゴチャといろんなことを言ってきたり、ちょっかいを出したりする人っていますよね。そういう時には、こう言ってみたいでしょうか。
He is annoying
彼って、うっとうしくてイライラさせられるわ
もともと annoy というのは、誰かを「悩ませる」という意味の動詞ですが、それに -ing が付いて形容詞となったものです。
日常会話でもよく使われる形容詞ですが、この annoying については、強烈な思い出があるのです。
以前、テクノロジー企業が集まる「シリコンバレー」のスタートアップ企業で働いていた時、同僚のマーケティングの男性が、仲間の男性によくこう言っていたものでした。
You are so annoying!
お前って、ほんとにウザいよね!
いえ、いくら小規模のスタートアップ企業とはいえ、オフィスの場は家族だけの自宅ではありません。ですから、よくもまぁ、他人に向かって「ウザいよ」と子供みたいにストレートに文句が言えるものだと、感心したのでした。
何かを不快に思ったのはわかりますが、TPOを考えると、相手に向かって annoying と発言した方の稚拙さに違和感を覚えるのです。そういう点では、「取り扱い注意」の形容詞かもしれませんね。
というわけで、「こんな場面でどういうの?」という用例をいくつかご紹介いたしました。
Warm and fuzzy
Wishy-washy
Dilly-dally
Annoying
いつもかわいいものを見て、warm and fuzzy と「ほっこり」していたい気分です。が、人間ですから、イヤな言葉を使わないといけない場面もあることでしょう。
もちろん、人の内面を表す言葉は、ご自身の感覚で自由に選べばいいことではあります。
あくまでも、こういう言葉もあるんですよ、というご提案でした。