Black Friday (黒い金曜日)
11月の第4木曜日は、待ちに待った感謝祭。12月のクリスマスとともに、アメリカでは、もっとも人気のある祭日です。
感謝祭。英語では、Thanksgiving(サンクスギヴィング)。
“Thanks” を “Give” する、つまり、「ありがとう」を「与える」というのが、語源ですね。まあ、平たく言って、「日頃の生活に感謝する」という意味なんです。
こんな質問も聞こえてきます。
Who do you want to give thanks to? (あなたは、誰に感謝したいですか?)
What are you being thankful for? (あなたは、何に感謝していますか?)
感謝する一日なので、こんなことをふと考えてみる、いい機会なのですね。
もともと、この日は、家族や親戚が一堂に集まり、夕餉(ゆうげ)の食卓を囲むのが決まりとなっているので、今でも、実家に帰る人々も多いのです。
カリフォルニアの場合は、よその州から来ている人が多いので、感謝祭の旅路も大変です。
今年は、感謝祭前後に遠くへ行ったカリフォルニア人は、5百万人近く(6人にひとり)。
そのうち、4百万人は車でお出かけしたそうなので、祭日のわりに、フリーウェイはかなり混んでいたようです。
全米では4千万人近くが遠出をしたそうで、日本のお盆の頃みたいに、陸と空で、「民族大移動」が繰り広げられるのですね。
そうそう、感謝祭の前には、こんな挨拶を忘れてはいけませんよ。
Happy Thanksgiving ! (楽しい感謝祭をね!)
こんなのもありますね。Happy Turkey Day ! (楽しい七面鳥の日をどうぞ!)
そして、感謝祭と切っても切れない縁が、Black Friday(ブラック・フライデー、黒い金曜日)。感謝祭の翌日の金曜日のことです。
え、金曜日が黒い?
実は、黒いというのは、「黒字」を指すのです。今までは赤字(red ink)だった経営も、この日を境に、黒字(black ink)に変わるという意味なんです。それほど、儲かる日ということですね。
このブラック・フライデーは、どこでも朝早くから店を開けます。大きなお店だと、もう朝の5時から開いています。
一年のうちで、もっとも安売りをする日なので、お客の方もそれをわきまえていて、朝の4時や5時には、もうお目当ての店の前で待っている人もたくさんいます。
この日のために、朝の5時から11時までは特別セールだよ!とか、急がないと数に限りがありますよ!とか、いろんな商戦が繰り広げられるのです。
新聞の広告もすごいです。「感謝祭の一日、ちゃんとお勉強しておくように」と、前日の感謝祭には各家庭にドサッと配られるのです。
そんなブラック・フライデーにまつわる単語に、doorbusters または、doorbuster discount というのがあります。
なんと、door(ドア)をbust(破壊する)ようなもの。つまり、破壊的な力を持つような、すごい割引という意味ですね。
人々がドアに殺到し、ドアが壊れてしまうようなものすごい安売り!
いや、実際、アメリカではよくある話ですね。あの暴動のような大騒ぎ。
このブラック・フライデーも、42インチの薄型液晶テレビが、たった999ドル(12万円弱)というのがありました。きっと、店の中では、取り合いだったんだろうなぁ。
今年、ブラック・フライデーにお買い物をしたアメリカ人は、1億4千万人(人口のおよそ半分)。
売り上げは、去年よりも6パーセント上がって、実に90億ドル(約1兆円)だったそうです!
この大事なショッピングの日は、「正式なクリスマス商戦の始まり(official start of Christmas shopping season)」ともされています。
今年は、クリスマスまで、31日もあります。いつもよりも長いので、お店の方も期待が大きく膨らんでいるのです。
そうそう、感謝祭をいつにするかには、こんなお話があるんです。
感謝祭が国民の休日となったのは、1863年、リンカーン大統領のとき。当時は、11月最終木曜日が感謝祭と定められていました。
ところが、その数十年後の1939年、時の大統領フランクリン・ルーズベルトが、それまでよりも一週間早めたそうです。
どうしてって、クリスマス商戦を一週間伸ばしたかったから。
その頃、アメリカは大恐慌時代。少しでも国民の消費の手助けをしようと必死だったようです。
まあ、クリスマス商戦の別名は、Spending Season。その名の通り、遣って、遣っての、消費の季節なのです。
みんなのクリスマスプレゼントのリストは、年々長くなる一方。ひとり760ドルくらい(9万円弱)は使うという調査もあるくらいなのです。
そんなクリスマスを控えたシーズンは、なんとなく心ウキウキ。
The holiday spirit(ホリデー・スピリット)とか、‘Tis the Season(ティス・ザ・シーズン)などと表現されます。
人々の財布の紐もゆるむかわりに、心も広くなります。遠くの親戚を思ったり、コミュニティーの見ず知らずの人たちを気遣ったり。
いつもよりも、もっともっとお互いを助け合うのが、感謝祭からクリスマスにかけて。とってもいい季節なのですね。
追記:ちなみに、わたし自身のお話です。ブラック・フライデーの金曜日、通院したあと、オペラ『セビリアの理髪師』を観に行きました(オペラとはいえ、コメディータッチなのでとっても楽しめるのです!)。通院途中、ショッピングモールを通りかかりましたが、さすがに、車がたくさん。例年、この日は、駐車場も見つからないくらい混むんですね。一度、車を停めたら、近くのモールには歩く!これが鉄則です。
翌日の土曜日は、サンノゼのサンタナ・ロウに行きました。フォトギャラリー「小さい秋」でご紹介した、新し目のショッピングモールです。ここは、安売りが大好きなアメリカ人にしてみたら、ちょっとお高いので、駐車場にもちゃんと車を停められました。
日曜日はあいにくの雨だったので、ネットでショッピング!(いえ、ただ、前から欲しかった本を一冊買っただけですけれど。)
実は、その翌日の月曜日は、Cyber Monday(サイバー・マンデー)と呼ばれているのです。感謝祭の週末、どこにもお買い物に行かなかった人が、ネットに殺到して、オンライン・ショッピングするという意味です。なんで月曜日まで待つかって、月曜日に会社に行って、オフィスのパソコンでショッピングする人が多いからでしょうね。
今年は、去年よりも7パーセントも、サイバー・マンデーのオンライン売り上げが伸びているというお話でした。