Merry Christmas (メリークリスマス)!
この言葉に説明はいりませんね。
クリスマスが近づいて来ると、あちらこちらで、このごあいさつが聞こえてきます。
会っていきなり言ってもいいし、別れ際に言ってもいいし、気前よく両方言ってもいいし、おめでたい言葉は、出し惜しみしないのですね。
この「Merry Christmas !」は、あんまり早いと、臨場感がなくって間が抜けて聞こえるし、結構タイミングが難しいんです。
近頃は、アメリカでもだんだんクリスマスを感じるのが早くなってきて、9月に入ると、早々とクリスマスの飾り付けを売っているお店もあるくらいです。
でも、親しい人たちの間のごあいさつは、やっぱり、12月も中旬になってからでしょうか。
わたしはいつも、クリスマスカードを出すタイミングがわからないので、斜め前のご近所さんが先頭を切ってカードをくれると、そろそろ書き始めるようにしています。
クリスマスは、元来、キリスト教の祭日なので、もっとも宗教色の強いものですよね。だから、Merry Christmas を意識的に使わない人も多いです。
そういう人たちは、Happy Holidays ! と言います。
これは、クリスマスから元日にかけて、休みを取る人が多いので、「楽しい休暇をお過ごしください」といった意味が含まれていますね。
アメリカは、クリスマスと元日が公共のお休みですが、会社によっては、年末オフィスを閉鎖するところもあります。そうでない場合は、自分で有給休暇を取る人もいるし、カレンダー通りに出勤する人もいます。
大方のアメリカ人は、感謝祭かクリスマスの時に、実家に帰って家族みんなで集うので、この時期お休みの人は多いですね。
カリフォルニアは、アメリカの中でも最も人種が混ざっている所です。ですから、市役所なんかの公共の場では、公平性を期して、Happy Holidays を好んで使うみたいですね。
キリスト教のクリスマスに対し、この時期、ユダヤ教の人は、ハヌカ(Hanukkah)というものを祝います。
これは、12月の8日間の祭日で、紀元前2世紀エルサレム神殿をシリア人から奪回したことを記念するものだそうです。
ヘブライ暦に基づくので、グレゴリオ暦では毎年異なりますが、2006年は、12月16日からの8日間でした。
言い伝えによると、神殿を照らす聖油が一日分しかなかったのに、奇跡的に8日間燃え続けたところから、ハヌカでは、毎日一本ずつロウソクに火を灯し、8日目には8本にするのが習慣になっています。別名、「光の祭り(Feast of Lights)」とも呼ばれています。
ですから、ユダヤ教のお友達が Merry Christmas!と言ってくれたら、Happy Hanukkah!と言ってあげるのがいいですね。
この時期、アフリカン・アメリカン(黒人種)の中には、クワンザ(Kwanzaa)というものを祝う人もいます。
これは、太古のアフリカ大陸との繋がりを思い起こそうという祭日で、12月26日から1月1日まで、7日間続きます。
人種差別に抵抗する市民権運動が盛んだった1966年、アメリカで始められたものです。キリスト教のクリスマスに代わるものとして生まれたので、宗教色は強くありませんし、あまり他の国には広まっていないようです。
クワンザとは、スワヒリ語で「初めての果実(first fruits)」という意味で、アフリカ大陸で伝統的に行われていた収穫祭を表すそうです。
アメリカには西アフリカルーツの人が多いわけですが、わざわざ東アフリカのスワヒリ語を使ったのは、アフリカ全土の文化(pan-Africanism)を象徴するためだとか。
このお祭りでは、毎日テーマが決められています。
一日目は「結束(unity)」、二日目は「自決(self-determination)」、三日目は「集団の労働と責任(collective work and responsibility)」と、黒人種としてのルーツや誇り、コミュニティー内での互助を考える日々となっているのです。
おもしろいことに、ユダヤ教のハヌカと同じく、ロウソクに火を灯すセレモニーなどもあるそうですよ。やっぱり、火は、神聖なものを表すのでしょうね。
もしお友達の中にクワンザを祝う人がいたら、Happy Kwanzaa!と言ってあげてくださいね。
ところで、今年も素敵なクリスマスカードをたくさんいただきましたが、その中で、印象に残ったものがありました。わたしの歯医者さんからのカードです。
いつもは、愛想無く、来年のカレンダーをポロッと送ってくるだけなのですが、今年は、ご本人の短いメッセージが入っていました。こんなことを言っています。
いつものことながら、今年も、歯を治療中のあなた方を“お見舞い”できて嬉しかったです。口が器具でいっぱいなのに、僕とおしゃべりしてくれたことに感謝しています・・・むにゃむにゃと返事してくれてありがとう(thanks for mumbling back)。
まぎれもなく、ご本人が考えた文章のようで、思わず笑みがこぼれてしまいました。
さて、クリスマスが終わると、いよいよお正月。
さっそく Happy New Year!のごあいさつも聞こえてきます。
Merry Christmas から Happy New Year へ、頭を切り替えなくっちゃ。
追記:残念ながら、ハヌカもクワンザも、わたし自身体験した事はありません。ですから、代用となる写真を使わせていただきました。
ハヌカの段落の柿は、「シャロン(Sharon)」というイスラエルの柿です。種無しの甘い柿で、イスラエルとスペイン、南アフリカで作られています。17世紀にヨーロッパに伝えられて以来、人気の高い果物だそうですが、学名は、「神の果実」という意味があるそうです。
クワンザの方は、ロウソクを灯す習慣があるので、ちょっと「クワンザらしく」アレンジさせていただきました。本来、ロウソクは赤3本、緑3本、黒1本の7本を使います。黒は黒人種、赤はこれまでの苦闘、緑は将来の希望を表します。燭台の下には、色とりどりの果物や、トウモロコシやピーマンなどの野菜を飾ったりするようです。
それから、冒頭の写真は、サンフランシスコのユニオン・スクエアです。ここのクリスマスツリーは、大きくて有名なのです。
後日談:大部分のキリスト教徒は、クリスマスを12月25日に祝いますが、ロシア正教徒は、今日1月7日に祝うそうです。昔の太陽暦であるユリウス暦に基づいているので、普通よりも13日遅いのです。
ロシアでは、1917年の革命で、ロシア正教をはじめとして、すべての宗教行事が禁止されていましたが、クリスマスは、1992年になって復活したそうです。
昔は、クリスマスイヴに、牛や馬の家畜の恰好をした人たちが、賑やかに家々をまわったり、クリスマスキャロルを歌う人たちが家族を祝福し、お礼に食べ物やお金をもらったりしていたそうですよ。