Friday the 13th (13日の金曜日)
突然ですが、わたしは、13という数字が好きではありません。
ホテルの13階なんかには、極力、泊まりたくないですし、病院の13号室にも入院したくありません。もしそうなったら、部屋を替えてもらうでしょう。
13段の階段も嫌いです。幸い、我が家の階段は16段あります。13段の階段のある家なんて、多分、買わないでしょう。
そう思って、この前泊まった東京のホテルで観察してみると、ありましたよ、13階が。アメリカ資本のホテルなのに、おかしいな。
実は、アメリカでは、ホテルやオフィスビルの13階は珍しい産物でして、いまだに、多くの新築のホテルでは、13階がスキップされているらしいです。
部屋を替えてもらうかどうかは別としても、13パーセントの人(!)は、13階の部屋は嫌だと、ごく最近の調査で答えています(USA Today/Gallup Poll の世論調査)。
いえ、アメリカには、もっとすごい人たちがいて、13日の金曜日は、行動をしない人までいるそうです。
たとえば、この日は出歩かないとか、飛行機に乗らないとか、それから、大きなお買い物や大事な投資は絶対にしないとか。
ある推計で行くと、こういった「13嫌い」の人は、全米で2千万人ほどもいて、13日の金曜日(Friday the 13th)には、アメリカ中で8億ドル(約950億円)ものビジネスチャンスが失われている、とも言われているそうです。
なんとなく昔の迷信のようですが、13を忌み嫌う習慣は、まだまだ現役なのですね。
でも、実際、ビルには13階がないことが多いので、消防士さんなんか、出動しても、13階がないと勝手に思い込んでいる場合もあるそうですよ。ちょっと危ない!
そして、ご丁寧なことに、この「13を恐れること」には、立派に英語の名前が付いているのです。
いやに小難しい名前ですが、triskaidekaphobia と言うそうです。
難し過ぎて、何と発音するのか、よくわかりませんよね。
まあ、単語を分解してみると、最後の phobia の部分は、フォビアと発音し、「(〜を恐がる)恐怖症」という名詞、接尾語です。
たとえば、claustrophobia といえば、閉所恐怖症のことですし、acrophobiaといえば、高所恐怖症のことです(acro は、ギリシャのアクロポリスのアクロですね)。
それから、最初の triskaideka の部分は、13を表します。もともとはギリシャ語のようですが、英語風にはトゥライスケイディカとでも読むのでしょうか。
細かく分けると、tris が「3」、kai が「と」、deka が「10」。つまり、「3と10」で、13なんですね。
そして、先日の4月13日は、バリバリの「13日の金曜日」でしたが、驚くなかれ、この「13日の金曜日に対する恐怖症」にも、立派な名前が付いています。
こうなると、もう「おまじない」みたいに聞こえますが、paraskavedekatriaphobia などと呼ばれるようです。
こちらも、ギリシャ語を連結した言葉で、「金曜(paraskave)、13(dekatria)、恐怖症(phobia)」です。
こんな風に、英語には「なんとか phobia (恐怖症)」がいっぱいあって、それこそ、何百とあるよといったリストを見たことがあります。
(こちらの写真は、4月13日金曜日の夕刻に撮ったものです。ちょっと、いつもと違うかな。)
そういえば、「13恐怖症」に似ていますが、日本や中国では、4という数字を嫌いますよね。発音が、「死」という言葉に似ているからと。
これも、英語文化圏には有名なもののようでして、英語では、tetraphobia と言うそうです(tetraとは、4本足のテトラポットのテトラでしょうね。つまり、ずばり「4の恐怖症」)。
まあ、いずれにしてもこんなものは、「黒猫が目の前を通り過ぎると、悪いことが起きる」みたいな迷信に過ぎないわけですが、それでも、わたしは、なんとなく13が好きにはなれません。
いつの頃からか、奇数もあまり好きではなくなりました。たとえば、テレビやステレオの音量調整だとか、エアコンの温度設定だとか、そういうのは全部、偶数の数値を選びます。
なぜだか、その方が落ち着くのです。
一方、日本では、奇数の方が好まれる傾向がありますよね。たとえば、結婚式のお祝いには、奇数の金額が望ましいだとか、お見舞いの花束は、奇数輪の花にしなさいだとか。
それに、お皿も、なぜか5枚セットがほとんどです。
わたしは、奇数が嫌なので、1枚買い足したこともあるくらいです。
ゲストはカップルでご招待する場合が多いので、偶数枚の方が理にかなっているとも思うのですが・・・。
ま、それにしても、7はラッキーだとか、8は末広がりで縁起がいいだとか、いろんな勝手な事を言っていますが、嫌われている13君、ちょっとかわいそうですよね。
追記:「13嫌い」という単語は、英語圏だけではなく、ドイツ語、ポーランド語、ポルトガル語圏などにも、存在するそうです。
そもそも、「どうして13や13日の金曜日は縁起が悪いのか」には、諸説がありまして、確たる答えは存在しておりません。
たとえば、古代スカンディナヴィアあたりでは、12人の神々に13人目の悪い神が加わり、その後、人間界に不幸が訪れたから、というのがあるそうです。
それから、イエス・キリストの最後の晩餐には、13人の弟子たちが参加し、十字架にかけられたのは金曜日だったから、という説もあるようです。
ちなみに、「13日の金曜日恐怖症」は、friggatriskaidekaphobia とも呼ばれるそうですが、この frigga とは、古代スカンディナヴィアの神話に出てくる偉い女神の名前なのですね。彼女は愛と繁殖の神で、「Frigga の日」というのが、「金曜日」を指すのだそうです。
いずれにしても、キリスト教以前のメソポタミアのハムラビ法典にも、13条目を除外してあったそうで、13は相当昔っから忌み嫌われていたようですね。
現代のハイテク業界でも、たとえば、マイクロソフトの次期 Office 製品は、13をすっ飛ばして 『Office 14』 と呼ばれるそうで、この「13嫌い」というやつは、津々浦々まで浸透しているようですね。