English words
英語ひとくちメモ/おもしろ表現
English Words 英語ひとくちメモ
2008年10月05日

A pain in the butt (お尻が痛い?)

前回の「Did you mean ~?(もしかして、~ってこと?)」というお話では、アメリカ人のスペルのいい加減さに焦点をあててみました。

どうやら、彼らは耳から入った音をそのまま書いてみようとするために、ミススペルの嵐が起こっているのではないか? という仮説を立ててみたのでした。

このスペルのまずさは、個人的なメールやネット上の書き込みなど、私事の段階では納まりません。公共の場でも、堂々と横行しているのです。

たとえば、日々の生活には欠かせないフリーウェイの看板。

場所は、サンフランシスコとシリコンバレーを結ぶ幹線道路のひとつ、フリーウェイ101号線(US Route 101)。

101号線は、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州と西海岸の南北を結ぶ長い国道です。
 サンフランシスコ・ベイエリアでは、Bayshore Freeway(シリコンバレーの辺り)や James Lick Freeway (サンフランシスコ市内)というニックネームでも親しまれています。

そんな幹線道路101号線には、次から次へと入り口や出口が出てくるのですが、その中に「Hillsdale(ヒルデイル)」という名の出口があります。

残念ながら証拠写真はないのですが、そのヒルズデイルの看板が「Hillsidale(ヒルデイル)」となっていたそうなのです。

う~ん、何を勘違いしたのでしょうか? きっと、この看板を書いた人には、ヒルズデイルの「ズ」という小さな音が、とっても大事な強調すべきものに思えたのでしょうね。

このヒルズデイルという出口は、シリコンバレーからサンフランシスコに向かって北上すると、ソフトウェア会社のオラクル(Oracle)のあるレッドウッドシティー(Redwood City)の次に出てくるものですが、この出口を下りて右(東)に行くと、フォスターシティー(Foster City)という静かな湾沿いの住宅街に出ます。

(こちらの航空写真では、左下の部分(北側)がフォスターシティーになります。真ん中の海は、サンフランシスコ湾です。)

この辺りは美しく整備された住宅街で、内海のサンフランシスコ湾や内陸部まで入り組んだ川には家々やアパートが面し、裏庭にはボートが停泊する家もある緑豊かな街並みとなっています。

(こちらの写真では、蛇行した川の右(北側)がフォスターシティーです。上部に左右に走っているのが、フリーウェイ101号線です。)

このように住宅街であるがゆえに、間違ったヒルズデイルの看板を見ながら、毎日通勤していた人もたくさんいるのでしょう。「いつもこの看板を見ていると、気持ちが悪くってしょうがない」という新聞の投書を読んだことがあります。

実は、このクレームは一年以上前に出されていたものなのですが、果たして、スペルミスはもう改善されているのでしょうか?

近頃、101号線のこの辺りを通ることはないので、いまだに確認はできてはいませんが、次回通るときには、チェックしてみることにいたしましょう。

けれども、間違いに気が付いていたとしても、この手のフリーウェイの看板は、架け替えるのが大変なんだそうです。なにせ、お金がかかりますからね。
 フリーウェイを運転していると、出口の看板なんてそんなに大きくは見えませんが、実際には縦2.3メートル、横6.7メートルほどもあり、ひとつ作るのに5000ドル(約53万円)もかかるそうなのです。その看板代に設置する労働費を足すと、一枚架け替えるにしても、決してバカにはならないのです。

今は、上から下への財政難ですから、「ちょっとくらいのミスは大目に見てよ~」というのが、行政側の正直な気持ちでしょう。

(注:現在は、「ヒルズデイル」はちゃんとしたスペルになっております!)

ちなみに、話はちょっと逸れてしまいますが、現在、オラクルの高層ビル群がそびえ立つ場所は、昔は「マリーン・ワールド(Marine World)」という遊園地があったところです。水族館と動物園が合体したようなおもしろいコンセプトの遊園地で、サンフランシスコ湾沿いの広々とした敷地には、ボート遊びができる池や、動物たちが放し飼いになっている柵があったりして、のんびりと一日を過ごせる場所でした。
 けれども、だんだんとこの辺の土地の価格が高騰して、税金を払うのが辛くなってきたのでしょう。1986年には、サンフランシスコのちょっと北にあるヴァレホ(Vallejo)という街に新しく遊園地を造って、こちらに引っ越しました。今でも、「ディスカバリー・キングダム(Six Flags Discovery Kingdom)」という名で営業を続けています。


(こちらの写真では、真ん中に池を囲んで建つビル群がオラクルの本社です。)


さて、話はガラッと変わりますが、前回の「Did you mean ~?」では、euphemismつまり「遠回しな言い方」というお話もいたしました。

たとえば、人種的な表現をぼかしてみたり、身体的に障害があることを間接的な表現に言い換えてみたりと、そんな例を出してみました。

それに加えて、こんなものもあるのです。そう、「お下品な表現」を避けて、ちょっと言葉を選んでみること。

たとえば、アメリカで頻繁に耳にする表現に、a pain in the butt というのがあります。

これを a pain in the rear end と、わざわざ言い換える人がいるのです。

この a pain in the butt という慣用句は、「イライラしてしまうような、うっとうしい人(物、出来事)」といった意味なのですが、最後の butt というのは、「尻」という意味ですね。つまり、日本語で言うと「尻が痛い」。

だから、直接的に「尻」と言うのを避けて、a pain in the rear end と言い換える人もいるのですね。
 この rear end 自体も「お尻」には変わりはないのですが、butt よりも柔らかい、お上品な言葉なのです。どちらかというと、女性が好んで使う言葉でしょうか。

そう、わたしが初めて a pain in the rear end という表現を聞いた相手は、女性の弁護士でした。

ちなみに、お尻は buttocks とも言いますが、ここから butt という省略形が生まれたようです。

この buttocks は、あくまでも「臀部(でんぶ)」という意味であり、別に俗語でもないので、トレーニングのときに使ったりもします。

たとえば Squeeze your buttocks ! (お尻をキュッと締めて!)みたいに。

(ちなみに、こちらの写真は、なつかしいソニーのアイボーですね。3年前にサンノゼで開かれたロボットの祭典 RoboNexus に出展されていたものです。)


この a pain in the butt(もしくは the rear end)に類似した言葉に、a pain in the neck というのもあります。

やはり、こちらも同じような意味で、「うっとうしいような、退屈なもの(人)」といった表現となります。お尻の代わりに、「首が痛い」という言い方になるのですね。

なんでも、pain(痛み)という言葉を人に対して使うようになったのは、19世紀末のアメリカなんだそうです。「あんたを見てるとイライラするよ」というのを You give me a pain とか You’re a real pain と表現したのが最初なんだとか。

そこから a pain in the neck だの、a pain in the rear end だのと変形し、後にアメリカからイギリスへと派生していったということです。
(参考ウェブサイト:www.phrases.org.uk)

そうそう、a pain in the butt よりも、もっと「お下品な」表現がありましたよ。

それは、a pain in the ass

こちらの ass は俗語で、「尻、ケツ」という意味なので、いよいよもって、わたしがお話しした女性弁護士なんかは使いませんよね。

この俗語 ass を使った表現で、「ケツにキスをする」というのがあるのですが、これは「相手にこびへつらう、相手の機嫌をとる」といった意味になります。

相手のお尻にキスをするのですから、これはもう、最高の機嫌とりですよね!

おっと、ちょっと話が逸れてしまいましたが、「遠回しな言い方」 euphemism

探してみると、他にもいろいろとありそうです。

追記: ついでに、「お尻」という表現をいくつか並べておきましょうか。文中でご紹介した butt、rear end、buttocks、ass 以外にも、bottom、backside、behind、rear、bum、buns、tush、tushy、can などといろいろあるのです。もちろん、この他にもたくさんあるようですが、これほど「遠回しな言い方」が存在する単語も珍しいかもしれませんね。

そうそう、一度、ホテルでマッサージをしてもらったとき、「このマッサージ台の上にお尻をのっけて」と言われて、とっさに何のことかわからなかったことがありました。このときは、tush (トゥッシュと発音)という表現が使われたのですが、こちらは何のことかとポカン。そこで相手は、bottom と言い換えてくれたのですが、とにかく、「お尻」は難しいものです。


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