I’m so sorry(ほんとにごめんなさい)
あんまり穏やかなお題目ではありませんが、I’m so sorry.
なんとなく、心が霧でモヤモヤしたときに使います。
これは、ご説明するまでもなく「ほんとにすみませんでした」という意味ですね。
I’m sorry という謝りの慣用句が、so という語句で強まった形になっています。つまり、「申し訳なく思う」という形容詞の sorry を so という副詞が強調していて、「とっても申し訳なく思っております」といった感じになりますね。
この so という副詞は、とても便利な言葉でして、形容詞を強調するのには好んで使われます。
たとえば、I’m so tired. 「わたしとっても疲れちゃったわ」
I’m so hungry. 「わたしものすごくお腹が空いてるの」
She’s so smart. 「彼女ってとっても頭いいわよねぇ」
(注: 英語で smart というと、日本語の「スマート」という意味ではなくて、「頭が切れる」という意味になります。)
それから、こんな風に動詞を強調する使い方もありますね。
I’m so not going there. 「あそこには、わたし絶対に行かないわ」
こちらの使い方は、ずいぶんとくだけた口語的な表現になりますので、おもにティーンエージャーが使うようでして、大人はあんまり使わないでしょう。
いずれにしても、形容詞を強調する場合も動詞を強調する場合も、so という部分はちょっと大袈裟に発音すべきものですね。
ですから、so の部分の語気を強めたり、ちょっと音程を高くしたり、「ソー」と長めに発音したりと、いろいろとトリックが必要になってくるのです。
ちなみに、I’m really hungry と、so の代わりに really を使うケースもあります。けれども、so の方が、より口語的なくだけた感じで、より強調された感じがするでしょうか。
(まあ、really の場合でも、I’m really, really hungry などと、何回か really を続けて、ニュアンスを強める表現もありますね。)
というわけで、I’m so sorry. 「ほんとにごめんなさい」
今回は、いったいどこから書くヒントを得たかというと、ある高校の先生が新聞の投書欄で I’m so sorry と謝っていて、この先生って勇気あるなぁと感心したからなのでした。こちらの先生は、高校生にスピーチの指導をしている方でした。
アメリカでは、みんなの前で行うスピーチ(speech)や討論(debate)がかなり重要視されておりまして、高校生ともなると、かなり本格的なスピーチコンテストが開かれます。
やはり、文化的に「自分のことは自分で守る」というような個人主義が発達していますので、自分の意見ははっきりと建設的に述べ、相手のことも同様にしっかりと聞く、そして必要とあらば筋道を立てて反論する、というような訓練が子供の頃からなされるのです。学校の授業でも、自分の意見を述べ、クラスに積極的に参加しているか(class participation)を評価されたりしますからね。
こういう風に自分自身の意見をまとめて述べる「弁論術」は、Forensics と呼ばれていて、全米には弁論術協会がいくつか存在します。そして、協会が主催する高校生や大学生のスピーチコンテストが各地で開かれ、予選コンテストでの優秀者は、全米大会への出場権を獲得という名誉を受けるのです。
とは言っても、高校生のようなティーンエージャーの間では、やはりスポーツに秀でる活発な子たちが人気が高く、弁論術を磨くような子たちは、「頭でっかちな nerd(ナード)」だとか「変人っぽい freak(フリーク)」だとか「ちょっと風変わりな、おたくっぽい geek(ギーク)」だとか、からかわれることもあるのです。
そして、先日シリコンバレーで開かれたスピーチコンテストを地元紙が取材したとき、取材を受けた高校の先生が、コンテストに出場した子たちを freaks や geeks などと表現してしまったのですね。
きっと、あとで記事になった文章を読んで、「自分は何と無神経な表現を使ったのだろう」と反省したのでしょう。さっそく先生は、掲載紙に謝罪文を投稿したのです。
「このようなわたしたちの地道な活動が、ともすると学校にとけ込めない子供たちにどれほど役に立っているかを示す代わりに、わたしは人を傷つけるようなステレオタイプ(固定概念、紋切り型の表現)を使って、何千人というティーンエージャーをはずかしめてしまいました。」
This error is mine alone. (この過ちの責任は、わたしひとりが負うものです。)
I apologize to all educators, parents, and particularly students who participate in speech and debate. (わたしは、すべての教育者や保護者、そして、とくにスピーチや討論に参加した生徒たちに謝りたいです。)
I’m so sorry, and I beg your forgiveness. (ほんとに申し訳なく思っておりますし、あなた方の許しを請いたいです。)
なんだか、とっても大袈裟な謝罪に感じますけれども、この弁論コンテストのスピーチ(forensic speech)というのは、自分で好きな話題について調査したり、長い時間をかけて考え抜いたりした内容を8分から10分にまとめ、みんなの前で身振り手振りを添えながらしっかりと表現する、という大人顔負けのものなのです。
それに、ノートを見てはいけないので、最初から最後までちゃんと覚えなければなりません。緊張してしまったら頭の中が真っ白になるでしょうから、スピーチを覚えるのだけだって、かなりの試練ではないでしょうか。
そんな難関をくぐり抜けて、見事にみんなの前でスピーチした子供たちを、freaks だとか geeks だとかと妙なレッテルを貼ってはいけませんよね。
わたしも最初に記事を読んだときには、これは教育者として適切な表現じゃないでしょうとも思ったんですよ。でも、自分が悪いと気が付いて、あとでちゃんと謝っているところに、教育者としての人格を感じましたね。
そして、教育者であろうと何であろうと、やっぱり謝るべきときには、素直に謝るべきだなぁと思ったことでした。
実は、わたしもごく最近、I’m so sorry とある人に謝ったばかりだったのです。
わたしの場合は、かなり失礼なメールを送ってしまって、次に会ったときには、あちら様が「ぶっきらぼう」になっていたのでした。「もう、どうでもいいや!」みたいな。
そのあと原因(失礼なメール)に思い当たったとき、どうやって謝ろうかと2日ほど悩んだのですが、結局、一番ストレートな表現を選びました。
I have to apologize to you because I was so rude to you in my e-mail the other day. I’m so sorry.
(わたしはあなたに謝らなければならないの。だって、先日のメールでとっても失礼だったから。ほんとにごめんなさい。)