Essay エッセイ
2008年06月21日

暑~い夏至、小鳥編

前回の「暑~い夏至」というエッセイで、ここ数日間の暑さのせいで、庭の小さな芝生もあえいでいるということを書きました。

あえいでいるのは、植物ばかりではありません。

ここまで暑いと、小鳥さんたちも辛そうにしています。そこで、我が家の小さな噴水は、恰好の水浴び場へと変身するのです。

そう、ちょうど、こんな具合に。体全体をザブンと水に浸け、「あ~、気持ちいい」と、満足げなご様子。

名前はわからないのですが、この小鳥は、お腹の部分が全部オレンジ色です。小鳥としてはかなり大きめで、前から見ると、とても華やかな雰囲気です。
 いつもは、羽根に覆われフワフワとした印象ですが、水に濡れると、こんな風に、結構スリム。

この小鳥さんは、春の終わりに噴水の水を入れると、真っ先に我が家にやって来るようになった小鳥。そのせいか、「この噴水は自分のテリトリー(領地)だ」と、完全に勘違いしている。

普段は、水を飲みにやって来るのですが、ここまで暑いと、朝に夕にと水浴びに終始します。そして、自分が水を使っているときは、「ここは俺のもの!」とばかりに、我が物顔に他の小鳥を追い払う。

不思議なことに、この「我が物鳥」がやって来ると、それにつられて、他の小鳥たちがやって来るんですね。
 そう、ちょうど、こんな風に。

「僕も水浴びした~い」と、ちょっと遠くに座って、順番待ちをするんです。(網戸越しに撮ったので、ちょっとボケていてすみません。)

「我が物鳥」の方は、気分がいいと、ちゃんと水を共用してあげるのです。が、気分が悪いと、エイッとアタックする振りをして、相手を威嚇する。

今日も、やはり、初めのうちは独占状態。

我が物鳥がバシャッ、バシャッ、バシャッ。

右端に見えている赤い小鳥は、それをジ~ッと、物欲しそうに見据えています。

けれども、幸いなことに、そのうちに我が物鳥も気分が良くなったようです。ジリッ、ジリッとにじり寄る赤い小鳥さんに対しても、寛容に接しておりました。

「まあ、いいだろう。許してやろう」と、言わんばかりに。

おかげで、小鳥さんも、ようやく噴水の淵まで来られました。

ところがどっこい、そうやすやすと水に入ることはできません。だって、いきなり水に入ったら、我が物鳥に怒られそうで。

そこで、赤い小鳥さん、噴水の淵にちょこんと腰掛けたまま、不動の構え。

そのままの姿勢で、約1分。我が物鳥の様子をじっと窺(うかが)います。

あっ、やっとの思いで、小鳥さんも水に入りました!

パチャッ、パチャッ!

ちょっと遠慮気味に、もひとつパチャッ!

この頃になると、さすがの我が物鳥も、「もう、どうでもいいやぁ」と言いたげな、投げやりな態度。

おかげで、小鳥さんも、めでたく水浴びの完了です。

どうでしょう。

「あ~、気持ちよかったぁ」と、なんとも満足げな、ふたりの顔。

すると、間もなく、つられて別の小鳥もやって来ます。

こちらは、お腹が黄色い小鳥さん。きっと赤い小鳥さんの水浴びを、遠くから見学していたのでしょう。

我が物鳥の気分を損ねないようにと、噴水の反対側にパッと着地し、水浴びを始めます。

パチャッ、足からパチャッ、お腹をパチャッ!

あくまでも、遠慮がちに、冷たい水で涼をとります。

すると、それが、我が物鳥の気分を害した様子。

エイッ、とやって来ては、とたんに黄色い小鳥を追い払います。

「フン、こっちの側だって、俺様の領域だいっ」と言わんばかりに。

かわいそうに、黄色い小鳥さん、ほとんど水の恩恵にあずかることができませんでした。

思うに、この黄色い小鳥さんは、赤い小鳥さんのように「にじり寄る」ことをしなかったからかもしれませんね。ジリッ、ジリッとにじり寄りながら、自分の存在を相手に知らしめることを怠った。
 「これからお邪魔しますよ」と、ちゃんと仁義を切らなかった。

と言いながらも、もともとこの噴水は、我が物鳥のものではないのに・・・


ところで、この噴水には、ハミングバード( hummingbird、和名 ハチドリ) も水を飲みにやって来るのです。かなりの常連さんとなっていますが、彼は賢いので、我が物鳥がいないときにやって来ます。

ちょっとピンボケの写真なので、全体に灰色っぽく見えますが、実際には、緑色のつややかな羽根を持っています。

裏の大きな木には、どうも、このハミングバードくんが住みついているようで、噴水が始まったり、ホースで水撒きをしたりしていると、水の流れに寄って来るのです。きっと、キラキラと光る水の柱に吸い寄せられるのでしょうね。

ハミングバードの大好物は、こちらのハニーサックル( honeysuckle、和名 スイカズラ)。
 なんともいい匂いの、黄色と白のかわいい花を咲かせます。花言葉は、ずばり、「愛の絆(きずな)」。これは、ハミングバードとの固い絆を表すのでしょうか。

春ともなると、我が家の脇には、ハニーサックルが咲き誇り、ハミングバードがご飯を食べにやって来るのです。

ブ~ンと、蜂のような羽音がしたと思えば、ハミングバードが耳元で羽ばたいているのです。かなり大きな羽音なので、熊ん蜂かとびっくりしてしまうのですが、ときに、チチチッと鳴きながら、あちらへこちらへと忙しく飛び回っています。

意外なことに、ハミングバードはあまり人間を恐がったりはしませんが、今朝、ボ~ッとした頭でハニーサックルの辺りを歩いていたら、あわてて逃げて行きました。きっと、ご飯の途中で大きな影がヌッと現れたものだから、さすがにびっくりしたのでしょうね。

ご存じの通り、ハミングバードはとてもすばしっこいので、写真を撮るのは至難の業です。きっとプロの写真家の方でも、相当苦労するのだと思います。じ~っと何時間もカメラを構えて、偶然やって来たところを瞬時のシャッターチャンスとする。

わたしも、もう何年もいい写真を取りたいと願っているのですが、庭の雑草取りなんかをしていると、「何してんの~?」と言わんばかりに、間近に寄って来たりするんです。もともとハミングバードって、かなり好奇心の強い生き物なんだと思います。

でも、そういうときって、絶対にカメラなんか持っていませんけれどね。

追記:それにしても、夏至ともなると、猛烈に暑いです。小鳥だけじゃなくって、こちら人間さんも、鼻の中の粘膜すらカラカラに乾いている!
 午後4時には、仕事場の室温が90度(摂氏32度)となりました。さすがに、エアコンの助けを借りねば、やっていけません。

なんでも、この日は、我が家の辺りでは、最高気温は105度(摂氏40.5度)だったそうです。近くのアルマデンの谷間では、109度(摂氏42.7度)を記録したとか!

サンノゼ市のダウンタウンでも、103度(摂氏39.4度)まで上がったそうですが、これは、1973年に観測された102度という記録を(見事に?)破ったようです。
 いつもは、夕方ともなると、とたんに涼しくなるシリコンバレーの夏ですが、この夏至の日ばかりは、寝苦しい夜となりました。


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